Shape of My Wings | ナノ



彼女はひとりだった。

熱すぎるマグマから逃げるように、高台の岩陰で膝を抱える。
知らされた『彼の追放』は、思っていた以上にショックだった。間柄としては、話をするだけで特別な何かがあるわけじゃない。ただ、唯一、心を許せる悪魔だったのだ。
彼が普通の悪魔と少し違うのは分かっていた。悪く言えば“甘い”、つまるところ“優しい”。口調や素行が荒くぶっきらぼうでも、芯にある優しさを感じ取れた。
けれど、結局それも裏切られてしまったらしい。
エルゴラムの話を鵜呑みにするつもりはないが、彼が帰ってこないのは事実だった。

そして、悲報から数日―
彼女の元に、再びエルゴラムがやってきた。
「ひとり?堕天使ちゃん」
「何か御用ですか。エルゴラム様」
その問いに、悪魔はニヤリと笑う。この間と同じだ。
「困るよねえ、秩序を乱されると」
「…何の話です?」
「どの面下げて来てんだかってバカを、捻りつぶすのは簡単なんだけど…」
状況を呑み込めていない天使の耳元で、悪魔がささやいた。
「――――」
天使の、ガラス玉に似た瞳が大きく見開かれる。彼女は脱力したように両腕を垂れ、それからゆっくりと視線を地面へ落とした。


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