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ヒーロー仮免許第一試験は、受験者1540人による勝ち抜けの演習だ。
ルールは至ってシンプルで、受験者たちはまず『ターゲット』を3つ“体の常に晒されている箇所”に装着し、『ボール』を6つ携帯する。ターゲットは、ボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落。また、3つ目のターゲットにボールを当てた人が"倒した”こととし、2人倒したものから勝ち抜きとなる。そして、通過できるのは『100名』だけだ。
単純明快、曖昧な判定は無く、白黒ハッキリとつく試験内容だった。

 *

一次通過が“先着100名”と限定されている以上、同校での潰し合いはまず起こらない。チームでの団結と連携が鍵となってくる。そう語る緑谷出久の声を頭の中で反響させながら、天音は意識を辺り一帯へと集中させた。
単独行動を選択した爆豪と、それを追いかけるようにして行った切島と上鳴。同じく個の力で打開することを選択した轟を除き、自分を含む17人の位置を把握する。
「…御詞さん、どうかな?」
「緑谷くんの言う通りですね。開始後すぐに、四方から一斉攻撃が来ます。どの学校も、多数が雄英を標的とする…。でも皆さんなら防げます。ターゲットを護ることを優先すれば大丈夫です」
緑谷の問いに、天音はクラスメイトにだけ聞こえるくらいの声で『啓示』を簡潔にまとめて言葉にした。それから考えるように頭を垂れ、右の拳を額へと当てる。
これだけの人数をまとめて見るのは殆ど初めてに等しかった。ぐるぐると目が回り、対象が増えれば増えるほど未来の選択肢は多く、曖昧な答えになる。
「…問題はこの後です。わたしたちの狙いは分かってるでしょうから、どこかで物理的に分断される時が来る…これは防げないと思います」
「防げない…じゃあ、先に分かれておくのは?」
「分断“させる”方が道は広がるかな…と。これには他校生も巻き込まれます。だから、一旦攻撃は止むはずです。その混乱に乗じて包囲網を掻い潜り、そこから再度仲間を探す。最低でも二人一組以上…雄英生同士でグループを再結成できるのが理想です」
「なるほど。俺たちを陥れる力も利用する…か」
「はい。それから、初手の攻撃を潜り抜けたら、わたしは別の場所に移動したいと思います」
「御詞さんの啓示は一つの道として…基本は個々の力で、だね」
集団で動く場合、御詞天音の『啓示』は“聞いておくべきアドバイス”くらいで考えた方が良い。それは相澤からの忠告であり、神託依存を阻止する意味でも重要な事だった。ヒーローとして個々人の判断力は極限まで高めておくのは当然の事で、『啓示』はあくまで一つの指標。御詞家の個性は、事の大枠を事前に予測しヒーローたちを備えさせるのが主な役割であり、戦いの中で始終頼れるものではなかった。
そういった事由で、御詞天音は最終的には単独行動に移ることを決めていた。
「あともうひとつ。これは、まだ啓示には至らない…勘みたいなモノですけど、どこかで一気に離脱者が出るような気がします。分断されても出来る限りこのフィールドに近いところで戦ってほしいんです」
「分かったわ。天音ちゃんのアドバイス…肝に銘じておくわ」
蛙吹梅雨の返答へ同調するように皆が頷き、同時にカウントダウンが始まり、全員が身構えた。
雄英高校の生徒を囲むように集まってきた他校のヒーロー候補生たちを見上げて、天音が浅く息を吐き出す。

「スタートから3秒、来ます!」

杭が出てれば打たれる。
一斉に飛んでくるボールを個々で跳ね返し、緑谷出久はくるりと背後のクラスメイトたちを振り返った。

「締まって、行こう!」


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