PERSONA5 the FAKE | ナノ


06

蓮たちは向かって反対側の歩道へと移動し、あばら屋の全貌を眺めて、先ほどの斑目と祐介の様子を振り返った。

「なんか…いいヤツじゃね?二人とも」
「メメントスで聞いた『マダラメ』は別人なのかもね」

竜司と杏の感想はもっともだ。あの二人の間に書き込みにあったような闇があるとは思えなかった。しかし、日本画家・斑目一流斎に一致する情報が出ている以上、違うという判断を下すのは早計すぎるだろう。
そこで、暫く黙っていた咲が口を開いた。

「…喜多川くん、たぶん嘘ついてる」
「え?」
「もちろん、斑目先生を慕っているのは本当だと思う。けど、肝心な部分…噂については、やっぱり庇ってるんじゃないかな」

彼女の声はどこか確信を帯びている。祐介の様子から何を感じ取ったのか、あばら屋の方を見た咲は少しだけ目を細めた。その髪が風を受けて寂しそうに揺れる。

「ナビはどうなってる?」
蓮の問いに竜司がスマートフォンを取り出すと、驚くべきことにナビが反応を示していた。『マダラメ』『盗作』『あばら屋』…このあたりがキーワードとなったらしい。これを見る限り、パレスの持ち主はあの斑目一流斎だ。怪盗お願いチャンネルに書き込まれた“マダラメ”についても、先ほどの老人でほぼ間違いないだろう。

「これって…あんなジイさんにもパレスがあるのかよ…!?」

驚く竜司の声に、モルガナがひょっこり顔を出した。

「そういうことらしい。入るには、最低限『本人の名前』と『場所』が必要だ。あとはマダラメがこの『あばら屋』を『何』と勘違いしているか、だな」

パレスがあると判明したからには覗いてみる他にない。四人と一匹は、その場でパレスのキーワードについて話し合いを始めた。

「ボロっちいし『牢獄』は?」

最初に声を上げたのは、自称・切り込み隊長の竜司だった。

『候補が見つかりません』
「じゃあ『刑務所』!『倉庫』!それと…『教育指導室』!ついでに『牧場』!」

思いつく限りの言葉を挙げてみるが、どれもヒットしない。

「『あばら屋』を“何かと勘違い”…か。画家が考えそうな所って…」
「『美術館』は?」

咲の言葉に蓮が答えると、ナビが反応して一瞬眩暈がした。何気ない会話の中でどうやら正解を引き当ててしまったようだった。
空の色が変わり、蓮たちは怪盗服に変わった状態で先ほどの道へと立っていた。驚くべきは、後方にあった質素な『あばら屋』の様子である。

「見て、あれ…」

咲の指差す先を見ると、そこには金色に輝く巨大な美術館が建っていた。

「あばら屋が…美術館、マジ…?」

見渡す限りの金色…豪華絢爛を極めたそれは、竜司も思わず唖然とするほどの悪趣味な外装だ。

「パレスは欲に駆られた妄想の景色だ。カモシダのパレスが『城』だったようにな」
「でも、斑目さんって、現実の美術館にも絵は飾られてるよね?個展も大人気だったし、尊敬もされてるし…。そんな人がわざわざ『美術館』を想像する?」

モルガナの言葉に疑問を示す杏。鴨志田の時はすぐに因果関係が結びついたが、今回は少々不明な点があった。

「盗作や虐待とも関係なさそうだよな?」

竜司も不思議に思っているらしい。確かに、斑目があのあばら屋で芸術を生み出しているのだとしたら、そこを美術館だと思っていても大きな“勘違い”ではないだろう。しかし、パレスが示しているように、現状として斑目のその考えは“歪んでいる”らしい。何がどう歪んでいるのか…こればかりは考えた所で分かりそうになかった。

「じゃあ、少し行ってみない?中を見てみたら何か分かるかも」

咲の提案に、怪盗団はとりあえず内部の様子を見に行くことにした。正面は警備が万全で入れそうにはなく、脇の方から抜け道を探して侵入する。
鴨志田以降、久しぶりのパレスだった。


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