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[6]唐突に始まる死ネタ。※アルソウ注意
by 洸
2013/02/14 18:09
未来捏造注意。
安定の低クオリティ。
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「ソウっ!ソウ!」
容赦無く降る雨が、体温を奪って行く。
誰かが必死に自分の名前を呼ぶ声がして、ソウは重い瞼をこじ開けた。
「アル、フレッ、ド…?」
何故そんなに泣きそうな顔をしてるのだろう、と回らない頭で考える。
「…やった、のか……?」
「っ、あぁ」
「そうか……良か、った、な…」
そうか、これで彼を悲しませたものは無くなったのか。
傷だらけではあるが、致命傷は負っていない彼の姿に酷く安堵した。
「そんな事より、お前…っ」
泣きそうな顔だ、とソウはぼんやりと思った。
泣くなとアルの頬に手を伸ばしたくても身体が重くて動かなかった。
(あぁ…死ぬのか、俺)
唐突に悟った。
自分が今感じているのは、命の灯火が消えて行く感覚に間違いなかった。
“湊、少し変わってくれるか”
ふとイアルの声がして、ソウはゆっくりと目を閉じた。
「ソウ!」
「うる、せぇよ…」
目を閉じたソウに焦ったアルがもう一度呼びかけると彼は目を開けて眉を寄せた。
「イアル…?」
「時間が、無い……
良いか、アル、フレッド……湊のこと、忘れんじゃ、ねぇ、ぞ…」
「なんで、」
そんな最期みたいな言葉、聞きたくなかった。
いつもみたいに馬鹿にした様に笑って欲しかった。
「死に際、わかんねぇ、ほど、馬鹿じゃ、ないんでね…」
「んな事言うなよ…!」
すると彼は、アルが初めて見る優しい笑顔を浮かべた。
困ったように、仕方ないな、と言う様に綺麗に笑ったのだ。
「アル、フレッド……」
「何…」
「湊を、愛してくれて、ありがとう」
そして、彼の事を忘れないで。
この先、君が他の誰かを愛したとしても彼が居たということを、忘れないで。
「忘れるわけ、無いだろ…ソウの事も、お前も…っ!」
「そうか…なら、良い……」
あぁ、もう少し、君と手合わせしたかった。
カイにも、まだ教えてないこと沢山あったのに。
(でもまぁ…)
悪くない終わりだ、と思った。
多くの人の命を奪って来たけれど、それでも最期にこうして誰かを救えたのなら。
それに、
(…湊)
大切な、自分の半身。
一度は彼を先に失ってしまったけれど、今回は。
(君となら何処まででも一緒に行くよ)
例えこの身が朽ち果てたとしても。
(もう一人にはさせないから)
「お別れ、だな…アルフレッド……楽しかった、ぜ…」
「イアル、待てよ…」
限界だった。
イアルは無理矢理いつものようににやっと笑うとその意識を手放した。
つぅ、っと一筋の涙がアルの頬を伝った。
再び目を閉じてしまった彼の体温は、どんどん冷たくなっていく。
「泣く、な、ア、ル…」
「ソウ…!」
小さな声が聞こえて、そっと頬に手が置かれた。
その血に濡れた彼の手をアルはぎゅっと握りしめる。
「俺、の、為なんか、に、泣くな…」
そんな綺麗な涙を俺の為なんかに流さないで。
冷たい雨が降り注ぐ中で、君から落ちてくる涙だけが暖かい。
「なぁ、アル…笑って、て……俺の、分まで、笑って、生きて… 」
「…お前が、一緒じゃなきゃ意味ねぇだろ……っ!」
(……なんで、)
どうして、そんな事を言うんだ。
そんな顔で、そんなに震えた声で、死ぬな、なんて言われたら。
(生きたいと、願ってしまうじゃないか…)
ずっと、死んでもいいと思ってた。
誰かを傷つけて生きるくらいなら、いっそ殺してくれた方が楽だと、自分が生きてる意味などこれっぽっちも見出せなかったのに。
だけど君に出会ってしまった。
初めて触れたぬくもりも、抱きしめられた感覚も、全てが大切で愛おしくて、それだけで良かったはずなのに。
愛されたいと願ってしまった。
「…アル、俺…多分、ずっと、寂し、かったんだと、思う…」
「ソウ、もう良い。もう良いから、それ以上喋るな…っ」
要らないと言われる度に感じる痛みに気づかないフリをしていたけれど、形を捉える前に凍らせてしまったけれど、本当はずっと。
「…お前と、出会えて、良かった……」
「喋るな…」
「幸せ、だった……」
「…黙れよ……」
「アル、ありが、とう…」
愛してくれて。
愛させてくれて。
「黙れよ、なぁ、頼むから」
そんな言葉は聞きたくない。
ソウの分まで生きるのではなく、ソウと共に生きたいのだ。
じゃないと、意味が無い。
「これからだろう、ソウ。
まだ、始まったばかりだろう…」
やっと、長い戦いが終わったのに彼はここで朽ちるというのか。
それを、受け入れろというのか。
しかしアルにも分かっていた。
彼から伝わる鼓動が段々と弱くなるその意味なんて。
「ア、ル…さむ、い……」
ぽつりと彼が呟いた言葉にどうしようもなく胸が締め付けられる。
少しでもその身体に体温が移れば良いと、アルはソウを強く抱きしめた。
「ソウ…っ」
「アル、お前は、ちゃんと、前を向いて…」
(俺なんかに囚われるなよ)
大丈夫。
君がいるから、寂しく無い。
こうして、暖かい手で抱きしめてくれるから。
もう碌に君の声は聞こえないけれど、それでも触れた指先から伝わってくる。
ーー愛してる、って。
「……アル、好き、だよ…」
ソウの言葉に、アルがひゅっと息を呑み込んだ。
くしゃりと顔を歪めたアルを見て、ソウは綺麗に微笑んだ。
(あぁ、声が聞こえる)
先に旅立った人達の笑い声が。
ソウを待つ人達の声が。
(付き合わせて、悪かったなイアル)
(ーー良いんだよ、お前の望む事は俺の望む事だから)
(……ありがとう)
「アル、また、会えるよ……」
例えその時お互いがお互いを分からなくても。
何度でも、君を探しに行くよ。
君に、会いに行くよ。
「約束、しよう…」
「…っあぁ、約束だ」
ソウは絡めた小指を何処か安堵したように見ると、もう一番優しく微笑んで……そうして瞳を閉じた。
穏やかな、顔だった。
アルはソウの頬をそっと慈しむように撫でると、彼の亡骸を抱きしめて泣き叫んだ。
虚空に響く彼の叫びを、雨がそっと掻き消していったーー
さぁ…と風が吹いてアルの銀髪を揺らした。
ふと空を見上げればどこまでも透明な青が広がっていた。
綺麗だな、と素直に思う。
(でも、)
それよりもずっと綺麗な青を、彼は知っている。
寂しそうな笑みを零したアルは止まっていた足を再び動かした。
辿り着いた先は、小さな墓。
アルが愛した人が眠る場所。
「…久しぶりだな、ソウ、イアル」
あれから、どれだけの時間が経ったのかアルにはよく分からない。
成長が普通の人間よりも遅い自分の見た目は大して変わっていないし、定期的にここには来るけれど、アルの中で時間はあの日から止まったままだった。
「前を向いて歩くってのは、中々難しいもんだよな」
ここに来れるようになるまでにも、随分と時間がかかってしまったのに。
ソウがいない事がどうしても信じられなくて、何度も探しに行っては涙を流すカイやユアンに止められた。
部屋に行けば、いつもの様に微笑む彼が見られるような気がしてソウの部屋を訪ねるのを止められなかった。
だけどどんなに探しても、何度ソウの部屋に行っても、彼の姿を見る事は出来なかった。
そうしてようやく、彼は死んだのだと実感した。
「あぁ、そうだ、信じられるか?
この間アイリスとユアンが結婚したんだぜ。クロエとロイドに散々からかわれてたけどな。
あの二人はいつまで経っても変なところでガキだよなぁ…
アッシュはユカとなんだかんだ言いながら上手くやってるみたいだし、カイは相変わらず本ばっか読んで…最近はお前らの母国語の本もある程度読めるようになったってさ」
皆、ゆっくりと進んでいく。
辛かった事も、悲しかった事も、一つずつ乗り越えて、生きていく。
そこに“彼”がいない事が…こんなにも寂しい。
君が笑ってと言ったから、自分の分まで生きてと言ったから、今まで生きてきたけれど。
「……寂しいよ、ソウ」
イアルに言われるまでも無く、忘れるわけが無かった。
忘れたくても、忘れられなかった。
悲しみも、寂しさも、いつかは薄れていくと思ってた。
なのに、時間が経てば経つほど薄れるどころかより色濃くなっていって。
最後に交わした約束を信じて、アルは待ち続けた。
「なぁ、あとどれくらい待てば良い?
いつまで待てば……」
ーーまた君に会える?
「……おい、」
その時後ろから声を掛けられた。
反射的に振り返ったアルは一瞬上手く息が出来なかった。
「大丈夫か?」
深い、綺麗な青い瞳。
青白い肌。
髪の色だけは、彼と違うけれど。
ーー似ている、彼に。
「……」
「…聞いてる?」
「え、あぁ、悪い、大丈夫だ」
「なら良いが…泣いてるように、見えたから」
勘違いなら良いんだ、とそっと笑った顔も驚くほど彼に…ソウに似ていた。
もしかして…いやそんな事が本当にあるのだろうか。
だけど気のせいだと言うにはあまりにも似ている。
それに、この青を見間違うはずが無い。
アルが彼を凝視していると、それに気づいた彼がアルをまじまじと見返す。
すると、ぽろり、と彼の青い瞳から涙が落ちた。
「え……」
突然の事にアルは動揺するが、それ以上に彼の方が戸惑っているようだった。
「なん、で……」
「……っ」
「俺、ここに、来なきゃいけない気がして…誰かを探さなきゃいけない気がして…」
あんたを見たら何故か胸が苦しくなったんだ、と言った彼をアルは咄嗟に抱きしめた。
相変わらず、華奢で体温の低い身体だった。
(だけど、生きてる)
「ちょ、何…!?」
「…ソウ……っ」
間違いなく、彼だった。
アルがずっと会いたいと願い続けたソウが、ここに居る。
「お、おい、俺は…」
ソウなんて名前じゃない、と否定しようとした彼はしかし抱きしめられた感覚が酷く懐かしく思えて口を閉ざした。
(何故、こいつはこんなに震えているんだろう)
まるで、ずっと待ち望んでいたかのように強く抱きしめられる。
見ず知らずの、しかも男に抱きしめられているのに不思議と不快感は無く、むしろ安堵した。
「…ソウ、ソウ……っ」
苦しそうに、切なげに呼ばれる知らない名前を聞いた時、彼の脳裏に覚えのない光景が浮かんだ。
降り注ぐ雨、流れていく血。
徐々に体温を失う中で、君に触れているところだけ暖かい。
“約束、しよう…”
“…っあぁ、約束だ”
必要としてくれるのが嬉しかった。
優しく抱きしめてくれるのが暖かかった。
ソウ、と愛おしげに呼んでくれる、彼の声が好きだった。
(そうだ、約束したんだ)
どうして忘れていたのだろう。
会いに行くと言ったのは自分の方なのに。
(信じて、待っててくれたのか)
長い時間の中で、ずっと待っていてくれたのか。
忘れてしまっても良かったのに、それでも彼は。
「…アル、フレッド……」
小さく呟かれた音は、あの頃と変わらない想いを乗せてアルに届いた。
はっとして彼を見ると、彼はアルが好きな優しい笑顔を浮かべていた。
「ソウ…?」
「あぁ…アルフレッド、ごめん、待たせて」
物心ついた頃から誰かの姿を探し続けてた。
微かに覚えている約束だけを頼りに、今日ここに来なければいけない気がして。
そうしてやっと、君に会えた。
一筋の涙がアルの頬を伝って行く。
“ソウ”が見た最期の涙は、悲しみの涙だったけど今回は違う。
止まった時間が、動き出す。
「会いたかった、ずっと…!」
「…うん」
「何度も何度もお前を探して、でも見つからなくて」
「…うん」
「ここにお前が居たら、って何度も考えた」
「…うん」
「好きだ、ソウ…っ
あの時も、今も」
「…うん」
ーー俺もだよ。
そう言って笑った彼は、とても綺麗で…アルはそっと彼のそれに唇を落とすと、もう離さないという様に彼を強く抱きしめた。
「そういえば、お前今の名前は?」
「ん?あぁ、ミナトだ。
字は、変わらないんだけどな」
でも、アルフレッドが呼びやすいならソウで構わない、と付け足した彼の髪が風に靡く。
かつては栗色だったそれは、今は瞳よりも少し薄い不思議な青色だった。
綺麗な色だと思った。
頭上に広がる空よりも、ずっと。
「それにしても、アルフレッドはあまり変わらないな。あれから大分経つんじゃないのか?」
「あー…まぁ俺らは人より身体の成長が遅いからな」
「そういうものなのか」
「あぁ」
それを考慮しても、アルの成長は遅かった。
ソウが死んだあの日からアルの中の時間が止まってしまって、それがどうやら影響したらしい。
そう、クロエが言っていたけれど彼に言うと自分を責めるだろうと思ったから黙っておく事にする。
「あれから、何があった?」
「色々、あったよ。本当に色々…
少しずつ話していくよ。
だから…お前が今まで過ごして来た時間も教えてくれ」
ソウでは無く、ミナトが歩いた時間を知りたいと思った。
どちらも、大切なものだから。
「そうだな…俺も、少しずつ話すよ。時間が、かかるかもしれないけれど」
「構わない。
これから時間は沢山あるんだ」
動き出した時間を、今度こそ君と一緒に歩きたい。
アルがそう思った時、一つの気配が彼らに近づいてくる。
ミナトと同じように懐かしいそれは、アルに一人の人物を連想させる。
「ここに居たのか、ミナト」
がさりと音を立てて現れたのは、ミナトによく似た藍色の瞳の青年。
彼を見たアルは、あぁやっぱり、と思った。
(お前が、ソウを一人にするわけ無いもんな)
「お前なぁ、その何も言わないで勝手にふらっと居なくなる癖直せよ」
「…どうせ、誰も探さないだろ」
ため息と共に吐き出された言葉に、ミナトは素っ気なく答えた。
そんな彼を見てアルは、また複雑な事情がありそうだな、と思いを巡らせた。
「馬鹿、俺が探してるだろ、毎回毎回こうやって」
「……そう、だな」
ありがとう、と付け足したミナトを優しい目で見た彼はそこでようやくアルの存在に気がついたように眉を上げた。
その仕草がイアルによく似ていて流石だな、と感心するアルを見た彼はにやっと笑った。
「…60点」
「は…?」
「それでもまだ及第点以下だ。
それじゃあミナトはやれないな、アルフレッド?」
しれっと呼ばれた自分の名前に、アルは目を見開いた。
隣のミナトも驚いたように彼を見ている。
「お、お前…」
「覚えてたのか…!?」
「ん?まぁ所々な。今こいつを見て全部繋がったよ。
ただミナト、お前の記憶は俺よりずっと朧げなものだったから混乱させるだけだと思って今まで言わなかった…悪かったな」
「いや、良いんだ…」
この二人には毎回驚かされるな、と会話を聞きながらアルは思う。
姿は変わっても、中身は変わらない。
そのことが、たまらなく嬉しかった。
きっと、これからもまた様々な事があるだろう。
辛い事も、悲しい事も、勿論、嬉しい事も、楽しい事も。
それらを全部、分かち合っていこう。
例えまた別れる時が来たって、
何度でも、探そう。
何度でも、会いに行こう。
どんなに姿が変わっても、それでも見つけてみせるから。
何度でも、君に出会ってみせる。
アルは空を見上げ、何処までも続く青を見ながらそれよりも綺麗な青を持つ彼に密かにそう誓ったーー
[7]無題
by 螢
2013/02/14 18:43
待ってwwww
ちょ…っ
目からシルバーリング出てきた…
アルソウ良いね!転生ものすごい似合うよね!うわあああああん!
待ってるアルも一途なソウも好きだ…うわああああ…
[8]無題
by 洸
2013/02/14 19:22
目からシルバーリングwww
きっと二人にとってはお互いが初めて好きになった相手じゃないかと信じて疑わない今日この頃。
僕が書くとなんかアルがソウ大好きになる←
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