短編 | ナノ


照れ隠し


「オメェ、俺のこと嫌いだろ。」


彼の部屋に意味も分からぬまま連れてこられた挙げ句、正座をさせられ、膝を立て偉そうな態度をした目の前の彼…根津甚八に突然突きつけられた言葉。
すごい目力でこちらを睨まれたので名前は一瞬怯んだ。


『そんなことありませんよ、甚八様のことは尊敬しています。』


笑顔で言った名前だが、甚八は余計目を鋭くする。おまけにこれ以上ないほど眉間に皺を寄せている。


「尊敬とかじゃねぇよ。嫌いかどうか聞いてんだよ。」
『嫌いじゃないですよ。』


あっさり言う彼女の反応を見て余計に機嫌が悪くなったのか、更に目付きが鋭くなる甚八。一体何が気に入らないのかまるでわからない。


「嫌いじゃねぇが好きでもねぇってか。」
『そ、そういうわけじゃっ!!』


慌てて否定した瞬間、甚八の口角がニヤリと上がったような気がした。


「じゃあ何だ。」


立ち上がって名前に近づき、大きな手を彼女の頬に添えながら、耳元で訪ねる甚八に、ゾクリと粟立つ感覚を覚える。


『その…私は他の方より容姿とか良くないですし、甚八様だったらもっと素敵な方がお似合いかと…。』


たどたどしく言い訳をしているとやたら彼の吐息を近く感じた。


「だから?」
『だから…その、私なんかに好かれても…迷惑ではないかと…』


頬に添えられてる手を通じて、恥ずかしさから上がった顔の熱が伝わってしまうのではないのかと思うと余計恥ずかしくなり、また顔が熱くなる。


「…俺はオメェじゃなきゃ嫌なんだよ。」
『ですけど、むへ…』


反論しようとすると、それを許さないと言うように今まで頬にあった手で強く頬を潰され、変な声が出た。


「もっと色気のある声を出せねぇのかよ、全く…。俺の言うことに反論すんな。」
「ふぁい。」


名前の頬を潰した手を離すと、ほんのり赤くなり、どこか照れてるように見える甚八の顔。


「何なら俺がお前をいい女にしてやってもいいんだぜ?」
『どういう意味ですか、甚八様。』


少年のような顔はすぐに消え、いつもの甚八に戻った。
名前はその切り替わりが面白かったのか、少し吹いたら笑うなと言われた。
バレたくなかったから
照れ隠しに笑った。



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