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『せ、ち…おめ…で、とう』



思わず抱き締めた背中は大きくて、暖かかった。




『…お、…と』




あぁ涙が出てくるくせに、うまく言葉がでてこない



しかもなんだおめでとうって、優勝してないのにさ


『あっ』




そういえば、なんで抱きついてるんだろう…………ここに来るってのも言ってない!
知らない奴に抱きつかれて困ってるよな!あぁぁぁ



『すすすみま「ひかり?」』



離そうとしても離せなくなったじゃん
あぁ…なんだろう、拭った涙がまた溢れてくる
恥ずかしいな、こんな場面。息ができなくなって窒息死しそう。





「ひかりだよね?」



『………えっと…、ひかりです。すみません』



「なんで謝るの?」




『今私も一緒の事思いました。すみません』




抱き締めてた腕を緩めたら逆に向こうから強く握ってきた



隣のコートでは、さっきの小さい子を胴上げしていて、楽しそうだなって思う



「今日来ないかと思った」



『私も来れないかと思いました』




「でも現に君はここにいる。この温もりは本物だ」




『うん…』




「後ろ振り向いたら居なくなってるって事はないよね?」




『いなくなりませんよ。絶対』




「ひかり」




―ギュ




「俺、負けた」




『うん、見てました』




ギュっと抱き締められていた、力がさらに強くなり距離を更に縮める




「カッコ悪いとこ見せたなぁ」




『……全然カッコ悪くなかったです。凄く輝いてました』




「ハハッ嘘でもそう言われると嬉しい」




『嘘じゃないです。本当です』




「………」




『………』




一瞬だけ沈黙が広がり、それから先に口を開いたのは彼だった




「俺、まだ君の顏見てない」




『正直私も見れてない、です』




「じゃあさ…顔を見る前に言っておきたいことがある」




『…はい』




「好き」




私が思っていたこととは180度違った答え
えっ聞き間違いとかじゃないよね…




ーバッ




『ひあっ』




「好きだ」




面と言われる言葉は、さっきよりも顔を赤面させた



「ねぇ、なんで泣いてるの」



『せっ精市だって、泣い、てるよ』



「俺のは汗」



『嘘、目尻が赤い』



「……………」



精市は手の甲で目を擦って、小さく「俺が泣くわけないだろ」って呟いた





「初めまして、俺が幸村精市です」




『はじ、めまして。こし、ひかりです、』



余裕そうに見える彼に比べて私はしどろもどろ




『しっっ試合おおおつかれさま、でしゅ』




「…………ありがとう」




『ええええっちょ、えっと、えっと、いきなり…すみません』




「俺は全然構わない」




『…えっと……』




「ねぇひかり…俺さ、君に感謝してるんだ」




『かっ感謝なんて、されること、してません』




「いいや、お前に会ってから精市は変わった」




『あっ』




精市とは違い野太い声が耳の中に入り込む




ーこの人は




『えっと…』




「真田弦一郎だ」




ー雑誌に載ってた人で…確か立海の副部長さんだったはず




「あれ、もしかしてしぇろさんだったりしません!?」




『えっとーもしかして赤毛君』




「俺のどこが赤毛っすか!」




『あははは、嘘嘘、ワカメ君でしょ』




「やっぱしぇろか!まさか会えるとは思わなかった!てか俺はワカメじゃねーし!」




「赤也、仮にも彼女は君より年上だ。」




「はいはいわかりましたよー」




『仮にもって何さ…』




「ごほっん…ところで、……お前には感謝している…しかし…えっとだな…」




『?』




「こっこんな時間に…このような場所で…ごほっん、抱き合うのは」




『あ』




「「「………」」」




『あわわわわわ!失礼しましたぁぁぁあ』




「弦一郎殺す」




『え?』




「いや、なんでもないよ。あぁもう表彰式がある…ひかり、すぐに終わるから少し待っててくれないか」




『あっ…はい、待ってます』





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