『う、うるせぇ』
バーベキュー腹になった私は10時には夢の中に入ったのだが、ひょんなことで目を冷めしてしまったのだ。
12時を回ってやがるのに、彼らはまだお兄ちゃんの部屋で人生ゲームしているようで
私がお兄ちゃんの部屋に行ったときも人生ゲームをしていたと思うのだが
ホットミルクでも飲んでまた寝よう
そう思い台所に行き牛乳をチンしていると庭の縁側に誰かがいるのが見えた
『ふ、不審者!!』
不審者に違いない!!ほ、包丁・・・・は、確かTVで言っていたが、逆に犯人に取られて自分が刺されるとかなんとか言ってたような
では他に・・ほかにハエ叩きぐらいしか見当たらないんですけどー!
逆にこんな普通の家に槍とかあったら嫌だけど、今だけはハエ叩きが槍であってほしかった!
「君か、」
『!?』
気付かれたっ。ヤラレル!!私はとりあえずハエ叩きを装備した
「ちょうど君と話がしたかったんだ」
『?』
カーテンがゆらゆら揺れていてそいつの顔がチラチラとチラつく
それにしても今日は月の明かりが綺麗だ
『あ』
不審者の正体はこの人か
数日前にこの人に「最低だね」って言われたのを思い出した
「この前は酷いことを言ってしまった」
あの日からこの人に会うたびに逃げて、避けまくっていた、ある意味トラウマな人だ
まさか今日家に来るとは思わなかったな
ゆ、ゆき・・・・せ、せいうち?
名前を忘れてしまった。アウチ
「こっちで座って話そうよ」
『…え』
その時丁度レンジがチンッとなった
熱いコップを手に縁側へと向かったが、どうも彼の顔を見るのが嫌なので窓際を背に体育座りをして彼の話を聞く
「君がまさか悠の妹だったなんて」
『私もまさか貴方とお兄ちゃんが友達だとは思いませんでした』
ガラス越しに向こうに居る人の熱が伝わってくる気がした
「これも何かの運命なのかもしれないね」
運命w
こんな運命私は望んではいなかったんですけどww
『それにしてもこんな所で一人で居て、眠れないんですか』
笑いの入った言葉の後に牛乳を一口飲んだ。やはりまだ熱い
「風呂上がりでね、ちょっと涼もうかと思ったんだ。それに綺麗な月がでてたから」
湯冷めしますよと言おうと思ったが言うのを止めた
『この前はすみませんっした』
「……」
一瞬沈黙が続いたがすぐに彼は口を開いた
「いじめってなんであるんだろうね」
『……え』
何か言われるとは思ってたが、いきなりそんなこと言われても困る
「女子のいじめの話は噂で聞いていたんだ」
そんなこと初めて会った時も言っていたような
「君はいじめを無くしたいとは思わない?」
『…思いますよ。えぇ思います』
「なら、なぜ君は止めようとしない」
『なぜって…』
なぜ…か、そんなこと言われなくてもわかってる
『いじめを辞めさせるには私の力は弱すぎる。それに知ってますか?そんなことをすると次に狙われるのは自分だって』
「そんなもの振り払えばいい」
『ふっ、笑わせないでください。貴方がどんな人間かはわかりませんが、いじめが怖くない人なんてほんの一握りなんですよ』
私はその一握りの手から零れ落ちた砂なんだ
「なら君自身が強くなればいいんじゃないかな」
『簡単に言いますけど、自分の弱さなんて簡単に…』
ふと左側においていたコップがずれていくのが目に見えた
『あ』
飲んでいる。熱くて冷ましていたホットミルクをいっきに飲み干している
「なら、」
そっとコップを置き
「俺がすべて飲み干してあげる」
『…』
にこっと微笑む彼に戸惑いの表情しか見せることはできなかったが、
『意味わかんないです』
と、苦笑いで席を立った
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少女はテニスコートへ走った