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「よおひかり。ちょっと渡してぇもんがある」

『100点のテストを見せられたら破り捨てる自信があります』

私の手元には成績の下がった、しかし瑠璃にとっては羨ましい点数が書かれた紙が握りしめられていた

「ちげーって」

クラスの視線を感じながら、来てくれた少しの喜びを背中に背負い教室を後にした

「ほら、大切にしろよ」

『これは』

夏休み前の事を思い出した

忘れかけていた記憶が、鮮明に頭のなかを渦巻く

「あの時のまんまだから」

『ごめんなさい』

「何が?」

『あの時…大切なものだってわかっていながら、大切なものだから乱暴に捨ててしまって』

「大丈夫だぜ。すぐにゴミ箱から出したから捨てられてもねぇしあの時のまま綺麗に輝いてる」

『先輩キモいです』

「いいから腕出せ」

『……』

右腕を強引に引っ張られ、数ヵ月前に腕にあった違和感が、装着される
先輩から貰ったバングル


「無くすなよ」

『はい』

「……あー!なんでこうしんみりになっちまうかな。よし、お前休日何してた」

『え』

照れ臭い雰囲気がきっと嫌なのだろう(私も)、先輩が珍しく休日の事を問いかけてきた

『休日は…友達と遊んでました』

なんで今日に限って…別に合コンの事を言わないのは騙してるようで悪いが私は下心で遊びに行った訳じゃない

尚更素直に言えばいいものの私は口を濁した

「やぁ快斗君」

『ぎ』

「あ、隣のクラスの…」

「胡桃沢だよ。一年のとき一緒のクラスだった」

「おう、覚えてるぜ。下の名前静だろ」

「嬉しいよ覚えててくれて。静って呼んでね」

『じゃあ私ここで失礼します』

一瞬男だと言うことを忘れて、先輩たちが話しているのをジィっと見つめてしまった

そうだこいつ男で、合コンの席にいた

変なことにならない内に私は足早に

「久しぶりひかりちゃん」

「なんだお前ら。知り合いか」

足早に逃げたかった

なのに、空気読めコノヤロウ!美少年じゃなければ蔑んだ目で見ていた
これだから目の保養は困る

『えぇちょっと同じ委員会で』

「土曜日の合コンで会ったんだよ」

『ぎ!』

「合コン!?」

「あれ、快斗君知らなかったの?」

「知らねぇよ…なぁひかり」

『違うんですよ。アレは友達に騙されていったやつで下心なんてないです』

確かに下心なんてない、でも黙っていた事に罪悪感を感じて思わず声を押さえて言い返す私

「下心無くても俺の知らないところで男に会ってたんだろ」

少し興った口調の快斗先輩

「楽しそうにしてたよ」

うざい美少年

『ですから友達と遊びに行ったら実は合コンだったわけで』

「合コンって気づいたらすぐ帰ればいいだろ!」

「カラオケの後も一緒に買い物行ったね」

『彼氏がいるってちゃんと言いましたよ!皆納得してましたし、それに帰ったら皆に失礼じゃないですか』

「あのな、じゃあせめて俺に隠すなよ!」

「そうだよね、やっぱ付き合ってるならそーゆう連絡必要と思うよひかりちゃん」

『確かに隠してた事は私がわるいです。でも特に何も無かったからいいじゃないですか』

「じゃあ俺もお前の知らない内に女と遊んでもいいんだな!」

「それはだめだよ」

『結局なんでそうなるんですか!酷い!先輩は自分から進んで遊びにいくんですか』

「じゃあ誰かに誘われたらいいのかよ」

「別れちゃえ別れちゃえ」

廊下、教室の中、聞こえるところまでは聞こえるだろう二人の荒々しい声と、そこにもう一つの声

野次馬がどんどんと増えていった

『もう…酷い……好きで合コン行ったわけじゃないのに』

「俺だって好きでこんなこと言ってるんじゃ無いんだぜ」

「いつ別れるの?」

『………あの胡桃沢先輩』

「静でいいよ」

『いや、さっきからちょこちょこ私たちの間に入ってきてますけど、何なんですか』

「早く別れないかなーって」

『はぁ?』

何を言っているのだろうかこの人…早く別れないかな?

え?何?別れさせたいの私たちの事

もしかしてこいつ私に気があるんじゃ




『も、もしかして静先輩は私の事が好きなんですか』

「え?違うよ。好きなのは快斗君だよ」























「は」

『……』

こちらを見ていた野次馬も私も固まった。あと快斗先輩も

動いていたのは、快斗先輩に抱きつく可憐な天使

いや、小悪魔と化した胡桃沢静だった










『え、あ……すいません』

抱きあってる(一方的に)二人の目の前にいるのが申し訳なく感じた



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