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「えへへ、ピンクの浴衣にしちゃった」

「凄いか、かぁ…可愛いよ…」

「多紀も似合ってるよその浴衣」

「……」

『……』

聞いてないこんなこと聞いてない

目の前でラブラブといちゃついてる友人を尻目に横でいつも煩いくらいに喋るが今日はなぜか大人しい彼を見る

「……」

今日は楽しい楽しい花火大会というお祭りではではないのでしょうか

『どうしたの』

「いや…あのね。僕うなじフェチなんだ」

『な』

なんてやつだこいつ…真面目に言っても言ってることは恥ずかしいぞ

「いつも洋服だから和服姿が……えっと綺麗です」

『…』

ボワッと頭が沸騰するのがわかる

お世辞だきっとお世辞だ、と頭で考えるがもう思考停止

「と、言う事でここから別行動だね」

『え』

「じゃあねー!」

『えええ!!』

いやじゃあねー!じゃ無いですよ瑠璃さん!

『まっ』

ガッシ

『!?』

「手、繋ごっか」

急に手を引っ張られて思わず転けそうになるがそれもひょいっと抱き抱えられストンと立たされた

「ね?」

『…はい』

すでに繋がれてる手が熱を持ち、ちょっと湿っている
拒否権って私にないんですかってよく漫画で見るけどその気持ちが良くわかるよ


「じゃあ回ろっか」

『そうだね…』

小学生が戦隊ものの仮面を被って走っていったり、綺麗な浴衣を身にまとった老夫婦、元気のよい屋台のおじさん、おいしそうなたこ焼きの臭い

屋台の集まる通りを通ればさらに祭りな気分が全身を駆け巡る

私祭り好きなんだよね

「楽しそうで嬉しいよ」

『え、もしかして楽しくない?』

「楽しいってより嬉しいかな」

『嬉しい?』

「だってほら」

すっと彼が右手を挙げると引っ張られて私の左手も一緒に上がる

「夢みたいでしょ?」

でしょ?って言われても…ごめん恥ずかしいですはい

『あ!お面!!』

一瞬の沈黙を遮って私が大声を張り上げて……しまった

いくらこの人混みで祭りと言っても大声では人の目線を集めてしまう

恥ずかしさのあまり彼の手を引いて、お面の売っている屋台へと走った


『ほら!狐のおめん』

最近は戦隊ものやプリキュアと言った子供向けのお面ばかりだと思ったら、こんなものもあったんだ

「欲しいの?」

『いやー見てただけ』

「おじさんこのお面一つ下さい」

『え!買うの!?』

「物欲しそうな目してたから」

も、物欲しそうな目してたのか私!!

「はいー、つけてあげるからじっとしててね」

『んー』

ちょっと低い声を出し、言われた通りにじっとしていた

『……私の顔見たくないからお面買ったんですか』

いや、つけてくれるって言ったけど普通にお面の部分で顔隠してどうするのこのまま歩けってかこら

「アハハ、かわいいw」

『そうだねーお面かわいいねーシバくぞ』

「ジョーダンジョーダン」

『むぅ』

「着け直してあげるよ」

ぁ、

小さく声が聞こえた


とその直後私は尻餅をつき

時が一瞬だけゆっくりに感じた

「す、すみません」

『いたたt……』

今の声

「たくっ…大丈夫か?」



「ちょっとぶつかっちゃった」

「あぶなっかしーな」

「ごめんねー!」

『………』

いまだに転んだ私を見捨ててその二人組は群衆の中へと溶け込んでいった

「だ、大丈夫?ひかりちゃん」

『うん』

「今のってひかりちゃんのクラスに転入してきた子と……」

彼の言葉が一瞬詰まった

「気分変えて何か食べようか」

『…そうだね』

このお面のおかげで顔を見られずに良かった

またあの見下した目で見られたら、私は理性を失って暴れてたかもしれない

「ほらたこ焼き食べよっか」

『……』

そうだよね

私には、今の私には彼がいる










(ところでお面はまだこのままなの?)
(……あなたがそうしたんでしょ)



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