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「おい」
『!?』
心 臓 に 悪 い
ふらぁーっとトイレの帰り道を歩いてたら横から伸びた手が私の腰を掴み口を封じた
『………』
「オメェー、何意地はってんだよ」
『……』
「あ、ワリィ」
選択教科以外では滅多に使われない教室
カーテンは締め切っており真っ暗な部屋の中に引き込まれ心臓が飛び跳ねないわけがない
一瞬だけ止まった息を口から吸った
『だ、誰りゃと……………思いました』
噛んでない、決して噛んでない
後ろから抱きついてくる人がかすかに笑ったなんて知らない!
「あの頃は良かったなー」
『…』
腰のにある手を振り払おうとして、グィッとさらに引き付けられた
普通の女子の力しか無いのが悔しい
『ちょっと暑いです。黒羽先輩』
「前のように名前で呼んでくれたら離す」
『かいとせんぱい』
「やっぱ無理」
『せめて緩めてください』
「そうすればまた俺から離れていくんだろ」
あぁこの人は何が言いたいかわからない
『魚食べたい』
「お前!?」
魚という言葉にびくついた隙に腕から離れた
ここでやっと先輩と向き合う
顔を見れば焦った表情。かとおもえばショックな顔で私を見てくる。止めてください。私を惑わさせないでください
『お、おめ、っでとうござい、ます。k、かのじょで、きたんですよね』
ヤバイ、息がうまくできない
どこで息継ぎをすればいいのかわかんない
吹っ切れたなんて、ホントは簡単に言えない
「あぁ?まあきの事か?」
『……』
「なんかお前勘違いしてないか?」
『…言い訳、聞いた方がいいですか』
「な、なんだよ言い訳って!!」
『そのままの意味で』
また私は…はぁ
反抗してしまう
「まあきとは付き合ってねぇよ」
『じゃあ彼女は先輩にとってどんな存在ですか』
「なんだよ存在って…てかただの後輩だろ」
『じゃあ私は、ど、んな存在ですか』
「……」
『やっぱいいですすみません』
「……俺が異性として見ている…存在?」
『…………』
ピョコンと跳ねた
「そんな感じ」
『意味、わかんないです』
一瞬の嬉しい気持ちとは裏腹に、機嫌の悪い低い声に見下した目付きで先輩を睨んだ
私はもう先輩を嫌いになってるんだ
そうだった…私は先輩が嫌いなのだ
『あの頃はホント良かったです、あは、でももう無理なんですよ。』
「そう思ってるのはお前だけじゃねぇのか?」
『…っち、』
意味がわからない
『私にはもう彼氏がいるんで馴れ馴れしく、二度と近寄らないで下さい』
「っ」
教室に濁った声が響いた
「そーかよ…悪かったな」
苛立ちながら出ていった先輩の背中を見ることはできず、唇を噛んだ
地の味がした
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