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※ヒロイン死ネタ




○月×日。

最近は雨が降り続いていたけど、今日は晴天だった。久しぶりに見た青い空を見て今日はなんかいいことありそうだなと浮かれていたのが悪かったんだ。朝からダミュロンに遭遇してしまった。相変わらず貴族出の傲慢な奴らと一緒だ。奴自身も貴族出だからそりゃしょうがないと思うけど、他の貴族とは違う何かを感じたのは気のせいだったかもしれない。…ダミュロンは相変わらずぐーたらしていた。見ててイライラする。なんでああいうぐーたらな奴らが同じ騎士としてここにいるんだろう。不思議でならない。


○月□日。

なんてことだ。憧れのキャナリ先輩がついこの前小隊長になって、私も誘われていい気分だったのにあのダミュロンがキャナリ小隊長の…私と同じ隊に所属された。しかも、小隊長の、副官…!?そこはあんたが入るところじゃないっていうのに!!なんでダメロンなんかがキャナリ小隊長の隣にいるの!あああああもう納得いかない!夢なら早く覚めてよ!!


▼月〇日。

今日も魔物の討伐任務。まだまだキャナリ小隊長たちに比べて変形弓を使いこなせていない私はドジを踏んで危うく魔物に殺されそうになったが、憎きダミュロンに助けられた。その際に奴は怪我をして、悔しい気持ちと可笑しな罪悪感が混ざり合って気持ちが悪かった。今日は早く寝よう。それで明日、ちゃんとダミュロンに礼を言おう。…簡単にいかない気もするけど


▼月□日。

謝りに行ったっていうのに、なぜか訓練に付き合わされた。不思議だ。なんで私より後から入ってきたのに変形弓を使いこなせているのだろう。才能というやつなのだとしたら、ここまで努力してきた私はなんなんだろうか。そんなことをなぜかダミュロンに愚痴ってしまった私だが、奴にすぐ「あほらしい」と返されてしまった。…もう、こいつに心を明かすのはやめようと誓った瞬間だった。


▼月…日。

キャナリ小隊長からダミュロンをこの隊に引き入れた理由を聞いた。…やはりこの人は素晴らしい人だと思い知った。私はダミュロンの外見ばかり見ていて、本質を見抜けなかったから。奴が本当は傲慢で陰険な貴族の連中とつるんでいるのに嫌気が差していたこと、本当は、誰よりも"本当の騎士"としての意志と技量を持っていたことなんて分からなかった。話を聞いて部屋に帰る途中、ダミュロンに出くわして声をかけられたが、なんだかよく分からない感情が湧き上がって軽く蹴り飛ばしてやった。ちょっとだけ、このダメロンを認めてやろうと思った。


#月!日。

ここ数ヶ月、帝都の外では魔物との戦いが激化して戦争になっていると聞いたが、とうとう私達キャナリ小隊にも命令が下った。砂漠へ出てテムザ山に向かうらしい。今日から日記もあまり書けないかもしれない。少々緊張と不安で固まっていたらダミュロンが話しかけてきた。またくだらない話でも始めるのかと思えば、奴は遠まわしに私を励まして、その会話が終わっていたときには手の震えが止まっていた。


#月$日。

砂漠に着いたものの、上官がうざい。ここからテムザ山に向かうらしい。…まだ歩くのか…足が限界なのは誰にも言わない。みんな頑張っているんだから。


#月*日。

テムザの基地に着いた。その間にデュークって人に出会った。キャナリ小隊長の話だと皇族の遠縁の大貴族の人って話だけど、その通りなんだか気品がある。…迫力のある人だ。しばらくその人を見つめていたらダミュロンに蹴られたので、蹴り返してやった。そしたら蹴り合いに発展してヒスームさんに二人で怒られた。…理不尽だ。


#月%日。

結界の効かない魔物。あんな圧倒的な力差を感じた魔物は初めて見た。実力差を感じた私たちは砂漠へ逃れ、船で帝都に戻ることにした。初めて、あんなに人が死ぬところを見たかもしれない。あの魔物から逃げられないような気がして、今にも襲ってこられそうな気がして眠れない。ひたすら起きていたらまたダミュロンがやってきた。「キャナリと俺を信じろ」だなんてすっかりキャナリ小隊長の片腕気取りだ。…でもその言葉で救われた私もいて、珍しく素直に頷けた。


+月▼日。

ばかな私は魔物のきょうしゅうを受けて大けがをしてしまった。いま、からだじゅうがいたい。憎たらしかった上官のひとも魔物にやられてしまい、生きのこっているのはほとんど私たちキャナリしょうたいだけ。あれだけたくさんいたのに、たったの数人。わたしはダミュロンに背負われていた。あるけないわたしはもう足手まといにしかならないのに、ダミュロンは何もいわずにわたしを背負ってさばくをあるき続けてくれた。ばかだなぁ、わたしのことなんて気にしないでキャナリしょうたいちょうのとなりにいればいいのに。それがあんたの役目なのに。…やっぱりダメロン、だな

あとちょっとでさばくを越えられるらしい。でも、あの魔物がまたおそってくるだろう。きっと無事に船にのれるのは、このなかでも更にかぎられた数人。そのなかにわたしはいない。分かるんだ。



「おい、何してんだ馬鹿」
「…ダミュロン」
「日記?…はあぁぁ…今更日記書いて何になるんだよ…今の状況分かってるか?」
「今のじょうきょう…だからだよ、」
「…相変わらず変な奴」
「あんたに言われたくない」
「そんだけ減らず口があれば大丈夫だ。もう出発だとよ。ほら乗れ」
「………」
「…おい、何今更遠慮してんだよ」
「…ううん。違うよ」
「あ?」
「ダミュロン、これあげる」
「いらねぇっての!他人の日記を覗く趣味はねえ!」
「じゃあ見なくていい。あげる」
「…お前な、」
「もう書けない、から……ページいっぱいで」
「…分かった分かったよ、もらってやるから早く乗れ」



わたしがめざしたのはキャナリしょうたいちょうのようなほんもののきしだけど、ちゃんとなれたかな。これからこの隊はどうなるんだろう。せめて、わたしをこの隊にいれてくれたキャナリしょうたいちょうと……





「ありがとう、ダミュロン」





ダミュロンだけは、無事でいてほしいな…



かみさま、もしいるならどうかわたしの世界をかえてくれたふたりを助けてください。
それがここで息絶えるわたしのさいごのおねがいです。

101207修正
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