俺の家を紹介します。 | ナノ
 



「大樹ーっ、壱哉君が来てるんだから早くしなさいっ!」

「分かってるってば!」


俺、園田 大樹(そのだ たいき)の一日は幼馴染みが迎えに来る所から始まる。


「壱哉ごめん!お待たせっ」

「良いよ。いつもの事だし」


母さんが見とれてしまう程眩しい笑顔を浮かべてるのは幼馴染みの遠山 壱哉(とおやま かずや)。
平凡な俺とは違って奥様受けする爽やかなイケメン。
昔から何をするにもずっと一緒で小学校の頃から学校の日は毎朝迎えに来てくれてる。


「母さん行ってきますっ」

「いってらっしゃい壱哉君」

母さんは息子の声なんか耳に届いてないと言わんばかりに壱哉にだけ見送りの言葉を掛ける。
この面食いめっ!


「たまには俺が迎えに行った方が待たせなくなるかな」

「気にするなって。大樹が迎えに来たらまた降りなきゃいけないし二度手間だよ」

「そっか」

それもそうだ。
やっぱ壱哉に迎えに来てもらおう。



俺達は生まれた時から社宅に住んでる。
それもただの社宅じゃない。
知らない人は居ないとまで言われる大手輸入品流通会社、『Schmetterling Gesellschaft(シュメッターリング ゲゼルシャスト)』の本社の選ばれた人だけが住める社宅だ。
もう、すっごい豪華。
ホテル並なんだよマジで!
父さんがこの会社の役職に就いてるから住んでんだけど場違いな気がして仕方ない。
役職って言っても部長だし。
しかも業績はぶっちゃけ良くない。
この社宅は業績が高い人から順に上の階に住める。
最上階は10階。
俺の家は1階。
つまり、業績はこの社宅の1番下だ。
役職に就いてなかったら絶対住めなかった。
そして壱哉の父さんは専務で8階に住んでる。凄いよな。
だからいつも学校に行く時、壱哉の方から迎えに来てくれる。



「よぉ、平凡じゃねぇか」

「まさか君に会うなんて思いませんでしたよ」

後ろから聞こえる声にビクッと肩が跳ねる。
今日は日直だから壱哉に頼んで早く迎えに来てもらった。
それが悪かったのか。
くそうっ、この2人はこの時間に登校してんのか…!


「お、おはよう。雅臣と春佳」

本当は今すぐ走り出したいけど後が怖いからゆっくりと顔を振り向かせて挨拶する。
顔引き攣っちゃってるけどね。

「あぁん?雅臣様、だろーが」

「俺は春佳様で良いですよ」

2人の言葉にクラッとした。
悪い意味でね。


この2人も実は幼馴染み。
口が悪い方は10階に住むこの社宅の帝王こと社長の愛息子、蝶塚 雅臣(ちょうづか まさおみ)。
敬語の方は9階に住む社長専属秘書の息子、奥井 春佳(おくい はるよし)。
同じ年だったのもあって小さい頃から皆仲良く遊んでた。
いや、仲良くないよ。
この2人は壱哉みたいに優しくない。
いっつも楽しそうに俺を虐めてたんだよっ!
お陰で2人を見るとビクッてしてしまう。

幸い、この2人とは高校が違う。
この2人は顔良し頭良し運動神経良しで裕福だから有名エリート校に通ってる。
俺は頭良くないし家もそんなに裕福じゃないから近所の男子校。
この2人と一緒じゃなくて良かった!
あと壱哉も俺と同じ学校。
2人とあまり立場的に変わらない壱哉もエリート校に行くと思ったのに俺と一緒の方が楽しいからって同じ学校に行く事にしてくれた。
雅臣と春佳に壱哉の爪アカっつか爪飲ましてやりたい。


「雅臣に春佳、大樹を虐めるなよ」

2人から庇うように壱哉が前に立ってくれる。
昔から壱哉は俺の味方。
お前は俺のヒーローだ!


「…まぁいい。平凡を構って遅刻なんて洒落にならねぇからな。行くぞ春佳」

「はい」

2人とも最後に俺の顔を見てニヤッて笑った。
あ、後が怖い…!

「大樹、何かあったら俺が守ってやるからな」

「壱哉…!」

お前は本当に良い奴だよっ!
学校でモテモテなのも分かる。
…男子校なのにね。

「ほら、行こう」

「うんっ」



一癖も二癖もある住人に虐めっ子、俺のヒーローも居る社宅。
それが俺の家です。
出だしから挫けたけど今日も楽しい一日になりますように!



「(大樹は俺が守らなくちゃ!)」

「(平凡め、ますます可愛くなりやがって)」

「(あの怯えた顔、堪りませんね)」





2011/03/02
前々から書きたかった社宅ラブ。
連載を増やす余裕はありませんのでシリーズという事で。
短編みたいに気が向いた時に更新します。


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