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ジョースター一行

海外旅行から帰ってきた異性にお茶漬けを振る舞うと好感度があがるらしい。
…何を言ってるのかわからないと思うが、私にもようわからん。
エジプトへ向かう長いようで短い旅の途中、DIOの刺客が次々と襲い来る中でも日本食が恋しくなるのは仕方がないと思う。花京院や承太郎は面には出さないけど、私はもう限界で限界で。


「ジョースターさん、お寿司寄っていきませんか!!」
情報収集のために立ち寄った市場で『SUSHI』の看板を目ざとく見つけた名前に死角はなかった。

名前はいち早くテーブルにつくと店員から受け取ったメニューを広げる。それに続いて好奇心を刺激されたジョセフとポルナレフ、やれやれといった具合のアヴドゥル、承太郎と花京院が卓を囲む。イギーはいつのまにか名前の脇で体をまるめていた。
「ああーっ、すごい! 写真が日本のネタと見劣りしてない! これはツいてるゥーッ!」
「キャラ変わってねーか名前のやつ」
「それほど寿司が恋しかったんでしょうな。私も久々のスシは歓迎ですがね」
アヴドゥルの一言に「お寿司好きなんですか」と名前が反応する。
「ああ、初めてスシを食べた時は衝撃的だったよ。魚のネタもいいが、私は玉子も好きでね」
「やだもうアヴドゥルさんかわいいチョイスなんだから!」
余程テンションが上がっているとみえる名前はバシバシと横に座るアヴドゥルの肩を叩いた。
そのやりとりを見て対面に座っている花京院は苦笑している。
「でも確かに久しぶりの日本食にありつけるのは名前のお陰かな」
「………」
承太郎が沈黙する横ではポルナレフがメニューを凝視しながら呻いている。
「ジョースターさん、このスシってのはどれがウマいんだ?」
「んン〜ッ、いつだったかカリフォルニアに寄ったときに食ったことはあったがのう…よく覚えとらんな」
「あっ、お二人がよければ私がまとめて頼みますよ」
すかさず名前が提案すると、ジョースターとポルナレフは同意した。
「アヴドゥルさんはお寿司慣れてるみたいだし、承太郎と花京院も自分で頼むよね!」
承太郎と花京院が頷くと、名前は手をふりあげて店員を呼ぶ。
一通りのネタを網羅すべく注文した。


「おお〜ッ、この『トロ』ってやつ、ウマいぜえ〜ッ!」
「そうでしょうそうでしょう。こっちも美味しいよポルナレフ」
そう言ってにっこりと微笑む名前がすすめたのはサーモンだった。数秒前、こっそりと彼女がそのネタにたっぷりとワサビを仕込んでいたのを承太郎は見逃していない。が、ポルナレフに義理立てて教えるつもりもなかった。ジョセフと名前がニヤニヤと動向を見守っているあたり、二人が共犯者なのは間違いない。
「ヤレヤレだぜ…」
「あれ名前、もうパフェ頼んだんですか?」
花京院が彼女の目の前に置かれたフルーツパフェを指差す。
「甘いものは先に食べておかないと、お腹いっぱいになっちゃうから!」
パフェならここでなくても食べられるのでは…と花京院は思ったが、彼女がそれで構わないのならそれでいいか、と余計な口ははさまないでおく。
「チェリー端に寄せてるけどいらないのかい?…よかったら僕にくれないか」
「いいよーどうぞお好きなだけ舐るがいいよ」
名前が身を乗り出してさくらんぼを差しだす。え、と花京院は顔を赤くしてたじろいだ。
「はい花京院、あーん」
「………」
「かっカラァ〜〜〜イ!!!!!」
ポルナレフの叫びに一同が注目する。さくらんぼを花京院の口に押し込んだ名前はジョセフとハイタッチをした。
「こらこら、他にも客はいるんですから」
水、水、と潤いを求める被害者を横目に、アヴドゥルが騒ぎ過ぎのイタズラコンビをたしなめる。
「ごめんなさァい」
「悪かったなポルナレフ。ホレ水じゃ」
イギーは席の上で名前の注文した唐揚げを食べている。思いの外お気に召したようで、名前が頭を撫でても抵抗する気をみせない。
一方で花京院は口の中のチェリーをどうしたものか悩んでいる。
「食べねえのか花京院」
口の端を持ち上げて承太郎がからかうと、花京院は種だけとり出してすぐに呑みこんだ。
「僕もパフェ頼もうかな…」


「炙りはないのか…」
アヴドゥルが少し残念そうにつぶやく。
「炙りもお好きなんですか。通ですね! でもアヴドゥルさんなら…」
淡い期待をこめて名前が言うと、なるほどと承知してマジシャンズレッドを呼び出した。闘いではそう使わないであろう、指先からごく僅かな炎を発生させると目の前のネタに浴びせる。
「おい…」
承太郎が呆れて声をかけたが今だけだから、とスタンドの無駄遣いをさせてもらう。
「ポルナレフ、さっきはごめんね。本当はお寿司ってすっごく美味しい食べ物だから! ささ、こちらをどうぞ」
名前が反省して炙りトロを箸でつまんで再びアーンの姿勢をとる。花京院のときといい、彼女に他意はないのだが、軽い気持ちで起こした行動がどれほど一行を焦らせているのか本人は知るよしもない。
ポルナレフは視線を受けながらも満更ではなく、大きく口を開けて応える。
と、もう少しで口の中におさまるところで、大人しくしていたイギーが飛び出した。小さく吠えたかと思うと箸の上の炙りトロをさらっていく。
「ああーッ!!」
悔しそうなポルナレフの声を尻目にイギーは床でトロを食している。
「また唐揚げ頼もうか」
名前が苦笑する以上にポルナレフは残念そうだ。それでもへこたれずに名前に迫る。
「名前! もっかい! もう一回今のやってくれ!! 頼むよォォ!!!」
「うっおとしいぞ ポルナレフ!」
承太郎の怒号にポルナレフと名前を除く全員が胸をなでおろしたのは言うまでもない。


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