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赤木19

 友人ぐるみでの付き合いをはじめて少し経つけれど、わたしはアカギさんの名前を知らない。だからカイジくんや南郷さんが呼ぶように、ならって「アカギさん」と呼んでいる。
 わたしの知っているアカギさんはせいぜい「よくご飯を食べにくる男の人」くらいの、二束三文な薄っぺらい情報しかない。だけどたぶん、カイジくんの様子を見るにそれだけの人物でないこともなんとなく察している。

 アカギさんとは、わたしがカレーの食材を買いに行った帰りに、カイジくんと連れ立って歩いているところに出くわしたのがはじめてだった。アパートの部屋が隣同士で、どこか人付き合いの苦手そうなところにシンパシーを感じたカイジくんとは、なんだかんだご飯をおすそわけしたり挨拶をしたり、親しくなったと思っていたので突然「よお、どうしたんだよこんなとこで」と気さくなトーンで声をかけられたことにはびっくりした。
 明るい表情をしたカイジくんの横で、アカギさんは無表情でわたしを見つめていた。その無表情っぷりが、友達と遊んでいたのにわたしという闖入者によってたった今冷めたと言わんばかりに映ったので、わたしはいたたまれなくなり、心の中でカイジくんへ「はよあっち行けー!」と叫ぶ。だけどカイジくんはわたしの懇願には気付かず、どんどん近付いてきたのだ。


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