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神域

「      」

あの人が死ぬ前に、私はどうしてもそれだけを伝えたくて走ったけれど。赤木さんの生前葬が行われるあの場所を見、あの人に善い意味でも悪い意味でも影響され、流れに身をとられかけた人たちが続々と現れては門をくぐっていくのを見て、私はとてつもなく場違いなところへ足を踏み入れかけてしまったのだと感じた。赤木さんが死ぬまで自分であることを貫いた――赤木しげるが赤木しげるたらしめる為には、必要なのは彼らであって、いつだって勝負の外にいた私ではない。
私は、とうとう最後まで赤木さんの最期を看取ることが出来なかった。
人が死ねば残るのは思い出だけで、あとはそれらを美化する作業しか残っていない。何度も何度も思い返しては捏造する。それが自分自身も望んでいない作業だとしても。
それでも今でも思うのです、赤木さん。
貴方は死ぬ前から私にとって神さまのようなひとでした。それだけは、貴方の死んだ後も生きる前も変わりないほんとうのことです。


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