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宇海零

「オレ、時々わけがわかんなくなるんだよな」
どうして?
「君のことが好きすぎて」
いやいやいや、なに本人に惚気てんの。
「こう、自分と世界と君と僕との間の境界線がなくなるような錯覚がひどくて」
いまどきそんな台詞陳腐な小説でだって無いよ。
…って、ちがう。ねえ、ちゃんと人の話聞いて。
「もういっそ全部一緒くたに纏めた方が楽だね。俺にとっては」
私の声聞こえてるでしょ、 零
「早い話がそういうことなんだけど、さ!」

 ねえ、  ぜろ!

はるか上空から突き落とされたような浮遊感と衝撃を感じて、飛び起きた。眠っていたはずなのに、意識のない間も体の活動が行われていたかのように、重い。虚脱感にも似た疲労がまとわりついてくる。
零が姿を消してしまってから半年、ずっとこんな具合で体が休まらない。
以前からその言動や行動を理解できた試しなどなかった。私は宇海零という人間をわかっていなかった。半年経った今でもすぐ帰ってくるような気もするし、二度と帰ってこないような気さえする。そんな不安定にしか零の断片を知っていなかったのに、あのころ私が安心していたのはどうしてだろうと考えると、零がどこまでも分からない人間だったからなのかも。きっと誰にも分からないような零だから、近しい私にしか分からないところがあるって思わせられてたのかな。ごめん、ちょっと何言ってんのか、それこそ分かんないね。ごめんね。
ねえ、ぜろ、こんどあんな風にまた言ってくれたとしたら、その時こそは全部一緒くたに纏めてしまおうか。どんな方法だっていい、もうどこにも、いかないで。


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