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三部承太郎

「空条くんの手って、すごい骨ばってる…ほら、だって私のと全然ちがう」
「…そりゃあな」

興味深そうにやつは俺の手を取り、まじまじと見つめる。ゆるく閉じた拳の浮き出た筋を、目と細い指がやわやわと辿っていく。
未知の動物の生態でも探るかのように観察するさまに息をつきたくなったが、こそばゆく這う指がさして不快でもなかったので為すがままにさせておいた。
ややあって、わきたつ好奇心にいつもの恥じらいを忘れている女は、ふと気づいたように俺の手を両手に握りしめたまま深刻げに顔をもたげた。

「これ、誰か殴ったりしたときに骨が手の皮突き破ってきたりしないの?」
「馬鹿かてめえ」

恐る恐る何を聞くかと思えば呆れたことを。
俺にしてみればお前のやわそうな体のつくりの方が奇奇怪怪だ。
その小せえ体のどこに今まで痛みを隠し、これからも抱えていく許容スペースがあるというのか。
もちろんその言葉を口にする義理はない。

納得しきっていない様子の視線が、俺の手の甲からその上の手首、腕へと流れていく。
嫌な予感がした。

「空条くん」
「それ以上は止めろ」

好奇心を刺激されていたのだろう瞳に、くたりと睫毛が落ちた。

てめー、本当にたちが悪いぞ。


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