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ポルナレフと承太郎と花京院

 あまりにも負けがこむと、はじめはどんなに意気揚々と臨んだ勝負ごとでも投げ出してしまいたくなる。この場合における彼女もまさにそのテンプレにはまり込んでいて、奥歯にちょっぴり力を入れて唇を引き結んだ。
 今日の当番は決まりだな、とチェスの試合を観戦していた承太郎が頬づえを取っ払った。彼女はむっとして承太郎を目の端で見、チェスの携帯ボードを挟んだ向こうでは姿勢を崩しきって腹這いになっているポルナレフが欠伸と一緒に背中を反らす。
 チェスで朝食を準備する係をどちらにするか賭けていたわけだが、こうもあっさり敗北するとは夢にも思わなかった彼女は落胆に息をつくと盤上の駒をざっと腕で落とした。あまりにつまらない勝負に眠たくなったのか、ベッドに戻ろうとするポルナレフを演技じみた所作で制するのを忘れない。今度はマグネット将棋を取り出した。ポルナレフはかすれた声でまだやるのかよ、と悪態をついた。どうやら将棋のルールまでは知らないらしい。もう朝食当番は決まっているくせに、諦めのわるい彼女は勝ったとばかりに上機嫌になりかけたけれど観戦席の存在を忘れていた。
 ぶっきらぼうながら、将棋はチェスとそう変わらねえよ、と承太郎がポルナレフの肩を叩く。曇りがちだったポルナレフの顔が一転、良い方に転ぶのと、彼女の表情が落ちていくのを見て花京院は早く朝食が食べたいと思った。


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