十二月三十一日 一年が終わる少し前――― 銀時「なァ、遅くね?」 高杉「ヅラのことだ、また余計なモン買ってんじゃねーの?」 坂本「いや〜!このミカンまっこと旨いぜよ!」 銀時「辰馬、お前食い過ぎ。手ェ黄色くなんぞ」 坂本「そうかの〜?」 高杉「つか皮散らかしてねーで手伝え」 坂本「アハハハハ!すまんすまん!」 寒い寒い冬の夜、買い出し係の桂を待つ銀時・高杉・坂本の三人は、仲良く?炬燵の準備をしていた。 (約一名蜜柑に夢中だが) 銀時「もうちっと早くこたつ出したかったんだけど」 高杉「早く出すとテメーの“こたつ睡眠”が増えるから出さなかったんだとよ」 寒がりな銀時は、一度炬燵に入ると、徒でさえ無に等しい行動力が更に減るという欠点を持っている。つまり、苦労するのは周りの人間なのだ。 そして、その被害を特に蒙っているのが――… 銀時「誰が言ったんだよ、ンなどこぞのオカンみてーなこと」 高杉「一人しか居ねーだろ」 銀時「………あーアイツ帰り際に雪に滑って転ばねーかなー?」 高杉の言葉に、銀時は雪がちらつく外を眺めながら、今頃張り切って買い物をしているであろう男に毒吐く。 そんな銀時の様子に高杉は心中呆れるが、炬燵布団の柄を見、意識を再び炬燵へと移した。 高杉「銀時、それ裏」 銀時「あ?こっちか」 坂本「ゆ〜き〜やこんこん、な〜んた〜らこんこん♪」 銀高「「歌ってねーでいい加減手伝えバカ!!!」」 (ドカッ!) 坂本「おォッ!!?」 地味な作業に苦戦する二人を余所に、未だ蜜柑を食しながら、うろ覚えの歌まで口遊みだした坂本。 これには流石の二人も一喝。いや、一発。 高杉「テメーはとりあえず散らかした皮を片付けろ」 坂本「了解じゃ〜」 指示を出された坂本は立ち上がり、大量の蜜柑の皮屑を持って台所へ向かったのだが、其処には今し方銀時と高杉が設置し掛けていた炬燵布団が。 坂本「ん?」 ――――!! 銀時「あ…」 高杉「やりやがった…」 坂本の足は見事に炬燵布団を踏んで滑り、そのまますってんころりん。 綺麗に合わせた布団と毛布は土台からずれ、その上には坂本と、転んだ坂本の手に在った蜜柑の皮達が鏤められた。 当然、銀時と高杉の口からは溜息が漏れ、時間を返せと言わんばかりに坂本を見下ろす。 坂本「アハハハハ!やってしもうたがぜよ!」 銀時「やってしもうたがぜよ!じゃねーよ!何してくれてんだテメーは!!」 高杉「ハァ…」 蜜柑の皮というものは、普通に剥けば千切れることがない為、蜜柑一つに一皮なのだが、坂本の剥いた皮は違う。 まるで花弁の如く、細々と千切れていた。おまけに渋までもが散っているせいで、掃除の手間が増えることに。 高杉は屑籠を持ってくると、坂本の前に差し出した。 坂本「おォ、すまんの〜」 高杉「お前はそこで皮の片付けと部屋の掃除。いいな?」 銀時「あんま動き回んなよ?また散らかるから」 坂本「分かった分かった!アハハハハ!」 銀時「ったく…」 これ以上部屋が散らかることがないよう、坂本の行動範囲を指定する二人。 言われた坂本は笑いながらちまちまと掃除を始めた。 高杉「銀時、ヅラが帰ってくる前に終わらせるぞ」 銀時「あァ、アイツにバカにされるのだけは御免だ」 問題は炬燵。この状態で桂に帰ってこられては何を言われるか分からない。 そして、それだけは何としても避けたい二人は、とりあえず炬燵布団に鏤められている蜜柑の皮やら渋やらを畳に払い落とすと、炬燵設置に心血を灌いだ。 . -章内- -全章- |