―――穏やかに吹く風、其れに乗るは青青とした草原。 目前に流れる川のせせらぎが、優しく耳に届いた。 坂本「いい天気じゃのー」 桂「こんなにいい天気だと、今俺達がやっていることすら忘れそうだな」 銀時「たまにはいいよな、こういうのも」 高杉「……………」 侍四人、何時も彼等の身体に染み付いた戦いの臭いは、今この時だけ、風と川の匂いに流れ、消されゆく。 坂本「お、晋助眠っちょる」 銀時「すーぐ寝るよなァ」 桂「気持ちいいからな」 心地好い天気と優しい風。高杉は何時の間にか草原を布団に、静かに、そして規則正しく寝息を立てていた。 銀時「うらうら」 坂本「アハハハハ!」 桂「止せ銀時。せっかく寝てるんだ」 銀時は、そんな高杉の顔を草で突つく。 擽ったいのか、眉を顰める高杉に、思わず笑みを零す三人。 銀時「爆睡かよ高杉ィ」 坂本「何かわしも眠とうなってきたぜよ〜…」 銀時「俺も…つられてきた……」 (ガサ…) 高杉があまりにも気持ち良さそうに眠っているので、銀時と坂本も瞼を重くさせ、草原に寝そべる。 桂「少し昼寝でもしたらどうだ?」 銀時「……………」 坂本「……………」 桂「…言うまでもなかったか」 横になるやいなや、直ぐに寝息を立て始めた二人に、桂は一人小さく笑った。 ** 高杉「―――…、」 桂「おぉ、起きたのか」 銀時と坂本が寝相を崩し寝ていると、高杉がむくりと起き上がる。 高杉「……コイツら寝てんのか?」 桂「お前につられて爆睡だ」 高杉「フン……」 桂「しかし…静かだな」 高杉「…そうだな」 鮮明に聞こえる草原の音と川のせせらぎ。 (ガサ…) 穏やかな表情を浮かべ空を仰ぐ桂に、短く返事をすると、高杉は再び仰向けになった。 桂は空を仰いだまま、続ける。 桂「なぁ高杉」 高杉「…あァ?」 桂「似てないか?この空」 高杉「何にだ」 桂「縁側で…俺達と松陽先生で見上げた、いつかの空に」 そう呟く桂をチラリと横目で見、高杉は、優しく微笑んでいる太陽を見上げ、小さく口を開く。 高杉「………忘れた」 先生――― この眩しい太陽、貴方に似てます。 先生と、バカ二人と見上げた空、本当は俺だって覚えてる――… 『晋助、太陽はいつでも優しく笑っています。暖かくみんなを見守っています』 素直にそう思えた。 貴方もそうだったから――― 先生、貴方を失った俺達は 何処へ向かえばいいんだ―――? 目が覚める瞬間、微かに聴こえた貴方の声―― 同じ言葉だった。 でも、俺が知りたいのはその先―――― 今の俺に投げかけてほしい 貴方の言葉――――。 何時か あの言葉の続きを 教えて下さい――――。 高杉は静かに目を瞑り、亡き師への想いを、優しく四人を見守る太陽へ密かに送るのだった――――。 次頁→あとがき? -章内- -全章- |