−2限目− 【嫌な事は誰かに話すと少し気が楽になる】 ――予定通り、名前の部屋に荷物は届いていた。 が、とんでもないこの状況。 「…えーと、銀ちゃん?」 「ん?」 「これは一体どういう事でしょうか?」 ニコリと爽やかに微笑みながら、銀八に問う名前。 銀八は数回瞬きをし、彼女の方を向く。 「うん。これは、アレだ。間違って転校生が男子だと思っちゃったというな…俗に言う“手違い”というヤツだ」 ははは、と笑って誤魔化す銀髪天然パーマ教師に、苛立ちを覚えた女生徒が此処に一人。 「どう間違ったらそうなるんですか?」 「どう間違ったらそうなるんだろうな…」 「で?女子部屋に空きは無く、もう男子部屋を使うしかないと」 「そうそう」 笑いながら冷や汗を流し始めた銀八。 「……………」 「名前、ちゃん…?」 「…先生、殴ってもよろしいですか?」 満面の笑みで、ぐっ、と銀八の胸倉を掴むと、名前は右手で握り拳を作った。 「ちょ、待て待て待て!恐い!恐いから名前ちゃん!!」 両手を必死にぶんぶんと振っている銀八に、名前は溜息を吐き、ゆっくり手を放す。 「嘘ですよ…」 優しい空気に戻った彼女に、ほっ、と胸を撫で下ろし、部屋を見ながらボリボリと頭を掻いた。 「どうしよっかァ…。校長に言ってみる?」 校長とは、あの変な喋り方の藤色の生物。 「いいよもう…」 「でもさ」 「また色々と面倒臭くなりそうだし」 「……。うし、じゃあ、もし何か危ない目に遭いそうになったら、真っ先に銀ちゃんの部屋おいで」 「いえ、それはそれで危険そうなんで遠慮させていただきます」 又しても妖しげな発言をする銀八に、しっかり手の甲を見せ、丁寧に断りを入れる。 「ヒドい名前ちゃん!何その目!」 「じゃ、片付けするんで、またね変態銀ちゃん」 おばさん口調になり、目を潤ませる銀八を軽く流すと、ひらひらと手を振りながら名前は部屋に入っていった。 ** 「嫌われたなァ銀八ィ」 「違うよ高杉くん。あれはな、嫌われたんじゃないの。あれも名前の一つの愛情表現なの」 「めでてェ奴」 「つか飴ちゃんどうしたお前!」 「無ェ」 「食ったなお前。それから高杉ィ、名前に変な事したら、銀さん許さないよ?」 「さァ?どうだかなァ」 「おまっ!絶対ダメだからね!?名前は銀さんのお嫁さんだからね!?」 「…言ってろ」 「あとな、飴ちゃんも今度奢れ!」 「……………」 名前が部屋に入った後、高杉が現れ、二人がそんな会話をしていた等、誰も知らないのだった。 . [章割に戻る] |