二人きりになるのは久しぶりで。すぐ隣の部屋には弟が帰ってた。それなのに、貪るようにキスをした。
「……」
「栄口」
名前を呼んで頬に触れると、下を向いたまま小さくぴくっと動く恋人。顔が赤いのは、耳を見れば分かる。頬から少しずつ指をずらして、その赤く染まった耳に触れる。
「んっ」
「栄口、敏感になってる」
「…だって」
あんなキス、されたら。
消え入るような声でそう言われて、俺はその耳にキスをする。
「すや、ま」
声も、漏れる息も、濡れた瞳も。すべて甘やかしたい。どろどろにとける溶けるまで。
廊下から足音がする。そっと体を離してその主を待つ。
「アニキー!栄口くんー!」
キャッチボールやろ、という言葉を待つ前にグローブを持って立ち上がる。結局は弟にも甘い。
「俺スライダー投げられるようになったんだよ!」
「えー俺取れるかな」
「栄口くんなら大丈夫だよ!」
「よーし、楽しみだなあ」
楽しげに笑いながら先に行く二人に、なんとも言えない安心感みたいなものを感じて、その後を追った。
Doing something sweet
その甘さは、それぞれ違う味だけど
戻る