「来たぞー!!」
「海ーーーーー!!」

サッカー部の二人は楽しそうに海へ飛び込んでいった。水しぶきが舞う。普通の海なら周りに迷惑かけるから飛び込むなと言いたいところだが今日は違う。

「ヒロインの家すげーな、こんな海」
「本当にね」

野球部の二人はパラソルを設置しながらのんびり会話している。その隣で日傘をさすヒロインは楽しそうに笑っている。

「そんなに広くないけど、他に人来ないから大丈夫かしらね」
「相変わらずプライベートビーチすごいね」

委員長はヒロインと中学からの仲で、以前も来たことがあるらしい。なんでもヒロインの友人はヒロインの家が所有しているここの島へのプチ旅行が毎年の定番なんだと。
まあクラスのほとんどが来ることなんて初めてみたいでご家族は笑ってた。

「パラソルちょっと不安定だな」
「ちょっと大きい石探してくるよ」
「俺も行く」

野球部は二人で石を探しに行った。少しの間見ていたら二人で走り出して途中で手を繋ぎだしたから何事もなかったように目を逸らした。ついていかなくて良かった。

「工藤」
「ん」
「綺麗な貝殻見つけたからやるよ」

バシャバシャと陸に上がってきた君島から、綺麗な色の貝殻を渡される。

「…サンキュ」

パーカーのポケットに貝殻を入れると、そのパーカーを脱がされて手を引かれた。

「っ、ちょ」
「ほら行こうぜ!!」

海へ入ると、日に当てられた肌がじわりと冷えるのを感じた。
浜辺で女子はビーチバレーをきゃいきゃいしている。そうしている内に野球部が戻ってきた。

「お」
「パラソル固定できたし、海ー!!」
「はしゃぎすぎて怪我すんなよ。阿部に怒られる」
「それは勘弁」

ユニフォームの形に白い素肌が、グラウンドを駆け回る高校球児を思わせる。

「晩御飯はバーベキューね!」
「ひゃほーい!!」

高校生はお金もないし、クラスの皆でこんなとこに旅行なんて普通はできないと思う。せっかくの機会だから思う存分楽しまないと。

「栄口、これ」
「わー浮き輪!!わーいっ」
「そんなに喜んでいただけるとは思わなかった」
「久しぶりだからね!!ありがとう巣山」
「おう」

君島はそんな会話をする野球部に近づき、栄口が入った浮き輪をひっくり返した。

「うおっ!!?」
「よしっ!!」
「っもう君島ー!!」
「ははっ、ごめんごめん」
「えいっ!」
「うわっ!!やめろってー」
栄口は水をばしゃばしゃかけて反撃した。巣山も楽しそうにそれを見ている。

「巣山」
「ん」
「…楽しいな」

俺の言葉に一瞬目をぱちくりさせた後、ゆっくり笑った。

「そうだな」

その後、委員長から集合がかかるまで楽しく過ごした。





「わー!うまそう!!」
「うまそう!!」

恒例になりつつある野球部の合言葉みたいなのを皆で言って、網に箸を伸ばす。肉も野菜も、普段と同じスーパーのものなのに何故かすごく美味しかった。

「うまーい!!」
「ね」
「あ、焼くの代わるよ」
「サンキュー」

各々が役割をうまく分担して、楽しく美味しく食べられているようだ。チームワークは誇れるクラスだと思う。

「今日はなんと!!担任の先生から花火の差し入れがありますー!!」
「結構色々用意してくれたみたい」

バーベキューも一通り落ち着き、委員長とヒロインが花火を持ってきた。登校日、日焼けした顔で皆で先生にお礼言わないとな。

「来られないの残念がってたけど粋なことするじゃん!!やったー」

君島がウズウズし始めた。こいつは本当に分かりやすい。皆がざわざわと片付けを始める。

「おい君島、打ち上げ花火俺に向けんじゃねーぞ」
「おやおや青木さん。そんなことはしませーん」
「ほんとかー?」

花火を始めてからも、皆は笑顔だった。でももう八月なんだなって誰かが言ったら何となく寂しい空気になって。

「たくさん思い出作ろうな」
「おい巣山さん!!それ俺が言いたかったのに!!」
「ん?」

巣山がいいとこを持っていったから、皆が爆笑。
花火とバーベキューの少し焦げ臭い匂いと、そして太陽と星空の海の、そんな夏の思い出。



***
あい様よりいただきました「一組で旅行ネタ」でした。遅くなってしまい申し訳ありません!!一組が大好きというコメントを頂きまして、ありがとうございます。君島と工藤が大好きとのことで、たくさん出させていただきました。
リクエストありがとうございました!!


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