「あ、美味しそう」
「イカ焼きか?」
「うん…でも、一本は食べられないからいいや」
「すみません、一本ください」
「え、ちょっと巣山」
「半分こ、ならいいだろ」
「…ありがと、巣山」
学祭マジックかおい。校内でいちゃつくなよな野球部。
イカ焼きをやっている屋台の空気が固まる寸前に。俺は店員の目の前に現れた。
「イカ焼きうまそうっすね!!でもお金ないんでまた後で!!」
「え!?あ、はあ…」
そして振り向けば野球部の姿は無くなっていた。
「っどこ行きやがったあいつら」
その時メール受信の知らせ。
『標的、二階のお化け屋敷に向かっている。至急応援求む。』
「よし了解!」
俺は走った。
そもそもこうなったのはこの間のホームルームの時間だった。
野球部は大会の公欠でいなくて。で、出し物は焼きそばに決まったんだけど…
委員長の提案によって、もっと重大な会議へと発展していった。
「他の人達の目を野球部から守らなきゃいけないと思うの」
クラスメイトは頷いた。全員その通りだと思ったからだ。
周りは野球部のイチャコラに慣れていないから、もし目撃してしまったらあまりのバカップルさに参ってしまうかもしれない。それは避けなければいけないだろう。学祭、皆が楽しめるように。
「じゃあ、皆で野球部ガードすっぞ!!」
「「おおっ」」
それから緻密な作戦を考えて今日を迎えた。この一月の間に、野球部に作戦が結構ばれそうになった瞬間はあったけれどもなかなかばれなかった。むしろここでばれないの!?ってくらい二人は鈍感だった。
「…他の野球部は気づいてんのにな」
あいつらは、周りが見えなくなるくらい幸せなんだろうと思う。
「あ、君島」
「工藤!標的はどうなってる」
「今入っていったよ。後ろから青木とクラスのアイドル高城が向かった」
「俺達も行こう」
「え」
俺と工藤はお化け屋敷に入った。
そしてずかずかと進んでいく。お化けの一人(?)が声をかけてきた。
「うらめしやーあ」
「うぎゃあああ!!」
「何驚いてんの君島」
「み、ずたに…」
「巣山と栄口なら、次の分かれ道右に行ったよ。次のカップルは左に行ったけど」
見失うなとあれほど言ったのにスパイは分かれ道で違う方に行ったのか!!
「サンキュ!!」
俺は工藤の腕を引っ張って右に曲がった。
「なんか過保護だよな」
「おお、阿部」
「ま、いいことなんかな」
「…何とも言えないけどね」
曲がると、お化けが呆然としていた。嫌な予感がした。
「っ」
「大丈夫だから、ゆっくり歩いていこう」
「や、手…離さないで、ね」
「うん、ずっと傍にいるから」
目の前で繰り広げられるメロドラマに、つい呆然としてしまった。が、お化けの人達が不憫になったので気を取り直した。
「やーん、怖い〜」
「大丈夫だよ。こっちおいで」
「きゃー!大好き!」
後ろから客が来た(リア充爆発しろ)。腹立たしいけど、そんなこと言っている場合でない。
「早く二人を行かせないと…っ」
俺は咄嗟に傍に置いてあったお化けの被り物を被った。そして野球部の元へ全力で走っていく。
「うおあああああ!」
「え」
「っ、わああああ!?」
野球部は手を繋いで走り、俺から逃げていく。ちょっと切ないと思ったのは内緒。
そして二人が出口から出たのを確認した後に、工藤を待って被り物を外して出た。
「あ、君島と工藤!!」
「ここ怖くなかったか」
「え」
「いきなり追いかけてくるからほんとびびった」
「栄口の手、ずっと震えてんだもん」
「し、仕方ないじゃん!!」
脱力して、俺はその場に座り込んだ。
「どうしたの?」
「お前も追いかけられて走ったのか」
「や、俺は追ってやった」
「?」
一旦休憩に入るかな。疲れたし。
「じゃあ次はボーリングでも行くか」
「え」
「巣山ボーリング得意だもんね」
「教えてやんよ」
「ありがと!!」
俺は携帯を取り出した。
「ミッションD!敢行する!!」
俺達の一日はまだ終わらない。
END
***
百花様よりリクエスト「文化祭の一年一組」でした。
一組メンバー人気あって嬉しいです。一人一人色々な設定やっていけたらなーと思っています。
百花様、この度はリクエストありがとうございました!!
遅くなってしまい申し訳ありません。文化祭のらーぜは色々楽しんでいると思います。
素敵なリクエスト、すごく楽しく書かせていただきました。
書き直し希望などありましたらお気軽にお申し付けくださいね。
本当にありがとうございました!
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