「…」

ゆっくりキョロキョロと、俺と尚治を見回す栄口くん。俺や尚治と同じ年なんて見えないくらい、柔らかくてあどけない。

「なあ栄口」
「っ」
「何回見ても、双子なんだからそっくりだろ」
「…そうでした」

さっき彼女と歩いていた時に名前を呼ばれて。見たことはあったけど知り合いじゃなかったから適当にお辞儀して去った。
彼女を家に送ってから帰宅したらさっきの人が尚治といて。

「仕方ないよな、一卵性だし」
「ぱっと見だけじゃ分かんないもんな」

彼女が家に来た時、気づかないで尚治に話しかけている光景は少し切なかったけどさ。

「だけど、双子だって分かってたら見分けられるよ?」

きょとんとした顔でそう言ってのけた栄口くんを、驚いた表情で見つめる尚治。そして見たこともないような穏やかな微笑みを浮かべて栄口くんの髪を撫でた。

「ほんとかー?さっき大分てんばってたみたいだけど」
「それは、双子だって知らなかったからだよ!!考えたことも無かったしさ」
「まあ、言うの忘れてたんだけど」
「ひどいよ巣山。…っと、巣山と良治くんって呼び方、何かおもしろい」

ふんわりと柔らかく笑う栄口くん。

「…じゃあお手並み拝見といきましょうか」

俺達はリビングから出て、そして服を取り換えてから俺が先にリビングへ入った。

「…」

よく顔を見ていないと。少しでも考える仕草があったら俺達の勝ちだな。

「あ、良治くん」
「……え?」
「巣山は外?」
「そうだけど、え、分かったの?」

あっさりと名前を呼ばれて驚いた。俺達ってそんなに似ていないのかな。いや、近所のおばさんは未だに見分けつかないぞ。

「さすが栄口」

リビングに尚治が入ってくる。その顔はすごく嬉しそうだった。

「分かるよー」
「でもあんだけすぐに分かるとは思わなかった」
「そう?俺から見たら全然違うけど」

多分、栄口くんは尚治のこと本当に好きなんだろうな。なんかいいな。

「何が違った?」
「よく見たら目の感じとか雰囲気とか。全然違うよ」
「…そうなんかな」
「なんか栄口が言うとそんな気ぃしてくんな」
「おう」

ニコニコニコニコ笑う栄口くん。

『栄口くんってほんといい子だから。だから、会ったとしてもきっとすんなり受け入れられるよ』

母親に言われた言葉が蘇る。その通りだった。

「良治くん、改めましてよろしくね」
「こちらこそ」

この人が未来の兄になんなら、それはそれでいい気さえした。



END



****
匿名様よりリクエストの「以前書いた双子ネタ続編」でした。
双子ネタは楽しく書かせてもらったので、今回も嬉しかったです。

匿名様!
この度はリクエストありがとうございました。双子ネタお好きだなんて嬉しいです。楽しく書かせていただきました!
書き直し希望などありましたらお気軽にお申し付けくださいね。
これからもよろしくお願いいたします。
本当にありがとうございました!



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