「いやっほー!!」
田島が海原に向かって駆けていく。そして勢いよく飛び込んだ。
「おい田島!!他の人もいんだから飛び込むなっての!!」
「あ、すんません!!」
「ったく」
泉がその後を追い、海に入る。ぞろぞろと野球部が追う。
夏休みってこともあって結構たくさんの人がいる。
恋が芽生える夏。太陽が照り返す海。
そんな中男だらけ10人で海。皆日に焼けてるけど野球焼けしてるから綺麗な日焼けではない。そんな10人。
そして…気になるのは周りからの視線。
「…はあ」
周りには若い人がたくさんいる。こんな中で恋人が肌を露出している。可愛くて優しくてふわふわしていて。そんな恋人だから…他人の目が気になるなんて当たり前だと思うんだけど。
「巣山ー!!」
優しい声が、太陽の下で耳に届く。笑顔も光って、そして細めの綺麗な筋肉が露になっている。
毎日野球をしているだけあって無駄な部分のない体。
「おう」
「早く早く!!」
それにあのキラッキラな笑顔がプラスされれば…見た目だけで十分な好青年。
周りでは綺麗なオネーサン達がビーチバレーなんかしていたけど、俺には栄口しか目に入らなかった。
「きゃっ」
女の高い声に振り向けば、転がるビーチボール。それを目で追えば…
「どうぞ」
「っ!」
ボールを拾ってきらきら笑顔。
「可愛いね、高校生?」
「あ、はい。部活の友達と」
「若ーい!!ねえ、一緒にビーチバレーやらない?」
「え、いや俺うまくないし」
「いいよー、お姉さん達が教えてあげるから!」
オネーサンの色っぽい大人の笑顔。栄口は抵抗力がないから顔を赤らめている。まずい。
「すみません、うちの連れなんで」
すっと腕を引っ張って栄口を引き寄せる。ビキニのオネーサンはキョトンとした後にまた色っぽく笑った。
「やー!こっちはおっとこまえね。ちょっと皆!可愛い高校生がいっぱいいるよ!!」
「え、どれどれ」
「ほんとだ!!」
わいわいとオネーサン達が寄ってくる。これはやばいぞ。
「栄口!」
「え……っ!」
腕を引っ張って走る。そして海にばちゃばちゃと入った。
「ど、どうしたの巣山」
「ここまでなら、来ないだろ」
「…さっきは、ありがとね」
「…俺が嫌だっただけだよ」
顔を見られたくなくて、水に潜った。
***
「も、巣山ってば」
こっ恥ずかしい台詞を言ってのけた後にすぐ潜って逃げられた。まったく。いつもいつも不意打ちが得意なんだから。
でも潜ってくれて良かったかも。真っ赤になってる顔見られたくないもん。
暑いから…だなんて言い訳、できないくらい恥ずかしかったから。
「っわ!」
そんなこと考えてぼんやりしていたら巣山が顔を出して泳ぎ出した。
「勝負でもすっか」
じゃばじゃば、巣山は泳いで離れていく。
すぐに追いかけようと思ったけど、隣から声が聞こえてきた。
女子高生…っぽい数人。
「あの人かっこいいね」
「坊主で硬派そうでかっこいい!」
「野球部かな、筋肉ガッチリで素敵ー」
近くに花井はいない。つまりこの会話の矛先は…巣山だ。
「っ」
誇らしい気持ちと悔しい気持ちが交差する。寂しい、なんか。
巣山がかっこいいなんて俺が一番よく知ってる。そうだよ、知ってるよ。
だけど、いつまでも焼きもち焼いているのも事実。
「…」
俺は巣山を追いかけた。
「、遅かったけど何かあった?」
「…何でもないよ」
「嘘だろ、何かあったろ」
「そ、んなこと」
「…」
真っ直ぐ見つめられると、はぐらかせなくなる。
「、巣山を女の子が、かっこいいねって、言ってたから」
「え」
「…だから、何か寂しくなっちゃって」
本音を話せばふと手を掴まれてそのまま水中へ。
「っ!!」
一瞬だけ、キスをされた。
「すや、すや!!」
「俺だけじゃなくて良かった」
「え」
「…妬いてたの」
「!!」
いつもいつも、嬉しい言葉をくれるから。だからまた大好きになる。
「巣山、大好き」
「…俺も」
眩しい太陽の下、楽しくて愛しい、夏休み。
***
「なんであいつら海水浴来てまでイチャイチャしてんの?」
「な」
「これじゃ組対抗ビーチバレーできないな」
「じゃあ花井、呼んでくれば」
「なんで俺なんだよ、阿部が行けよ」
「俺はやだよ。水谷行けよ」
「え、なんで俺!?」
END
***
水蓮様よりリクエスト「らーぜで海水浴な巣栄」でした。
季節外れの更新になってしまってすみません…
少しでも温まってもらえたらと思います 笑
水蓮様!
今回は素敵なリクエスト本当にありがとうございました!!
巣山君の肉体美をカラーで想像しただけで鼓動が早鐘のように鳴っていました←
そしてこういう話大好きなので楽しかったんですが…こんなんでよろしかったでしょうか!
書き直し希望、お気軽にお申し付けくださいね。
ありがとうございました!!これからもよろしくお願いいたします。
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