大学生設定



「あ、いらっしゃい」

ガチャリ、という音がしてよく見知った顔が現れた。

「久しぶり」
「うん、夏に会ったきりだから半年ぶり…くらいかな花井も阿部も変わってなくてよかった」
「もうそんななるか?」
「なるよー」
「何かいい匂いすんな」

今日は阿部と二人で栄口と巣山の家に訪問することになった。
実習やら入って、前に野球部が来るってなった時に来られなかった俺ら。

「あ、分かった?ご飯作ってた。お昼一緒どう?」
「じゃあ呼ばれていこうかな。なあ阿部」
「おう。栄口の料理とか調理実習以来じゃん」

はは、と他愛ない会話で笑いが弾ける。

栄口と巣山の二人が一緒に住む、って聞いた時に何の違和感も感じなかったのは、安心したからかかもしれない。
二人はいつも想い合っていて、色々悩みもあったみたいだけど、こうやって幸せそうに笑える毎日を送れるんだろうなって思えたから。

「栄口、玄関じゃなくて上がってもらえば?」
「巣山!!」
「いらっしゃい二人とも。出んの遅くてごめんな」
「巣山、レポート終わったの?」
「おう。今できた」
「お疲れ様」

ふわふわ。
まるで新婚のように、それでいて互いを思いやっている熟年夫婦のように。
二人の雰囲気は独特なものだった。

「じゃあ上がって!!ご飯食べよう」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」

シンプルなリビングだった。学生ということもあって広い部屋ではなかったが、所々に二人の何かが表れていた。

「煮込みハンバーグとマッシュポテトね」
「すげ」
「じゃあ俺ご飯盛るな」

人が何かしている中、何かしていないと落ち着かない俺はキッチンへ一歩踏み入れた。阿部はテーブルに座っている。

「あ、いいよいいよ座ってて!!」
「でも」
「俺が盛るから。花井も座っててくれ」
「巣山」
「今日は俺ら二人でもてなさせてくれよ」

爽やかにさらりと笑った巣山は、俺から見ても格好良い…と思う。

「じゃ、頼むわ」
「おう」

しかしそこで引いてしまったことを後悔した。

「巣山、味見してくれる?」
「いいよ」
「熱いかな…ふー、ふー、はい、あーん」
「、ん、うまい」

二人はキッチンでイチャイチャし始めた。
俺が固まっていると阿部が一言。

「あれは天然カップルだから何言っても無駄だぞ」

怒りっぽい阿部も諦めているようだった。勝手にテレビをつけている。
…天然さは、前からずっと変わらない二人。

「っあつ!」
「え」

栄口の声にキッチンを向けば、栄口がソースを指に弾いてしまったみたいで。

「ちゃんと冷やせよ」という言葉を発しようとしたらそこで声は出なくなった。

「ったく」

巣山は栄口の指をそっと自分の口に持っていった。そして水道の水に手を持っていって冷やす。
…指を口に持っていった意味は?

「あ、りがと」
「指、ソースの味してうまかった」

どっかん。爆弾投下。

「巣山ってば」

顔が真っ赤になっていますよ栄口。巣山は嬉しそうに笑って栄口の頭を撫でている。

「…」

きっと、二人は俺らがいなくてもこんなことを毎日素でやっているのだろう。

「…腹減った」

阿部の一言でこの部屋の住人は急いで作業を進めるのであった。

色々な意味で、ご馳走様でした。
あとは当分来なくてもいいかな。



END



***
むらさき様よりリクエスト「巣栄同棲ネタ」でした。
私も家政婦として一緒に住みたいです←

むらさき様!
この度はリクエストありがとうございました。
ふわふわな一組に、天然のろけされてみたいです。
来訪者は一組からーぜとのことだったので二人を選んでみました。
楽しいリクエスト、本当にありがとうございました!
書き直し希望などお気軽にご連絡くださいませ。


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