ガタタン、ガタタン。
電車に揺られて会社の最寄り駅へと向かう。

ーあと20分ってとこか。

会社では上司にも環境にも恵まれて結構楽しく仕事ができている。
朝はラッシュを避けて早めに出ているからまだ僅かに空席も見られる。これになれてしまったら満員電車には乗れないだろう。

プシュー…

アナウンスの後にドアが開く。
結構同じ車両にはいつも同じ顔ぶれが乗るのだけれど、乗ってきた中に一人見覚えがない顔があった。
普段なら気にも留めないが、同じようなスーツを着ているのにまだあどけなさが残る顔立ちをした男だったから。だから、つい気にしてしまった。

その男は眠そうに一回目を擦ったあとでゆっくりと歩いて俺の横に座った。
ちらりと向くと目があってニコリと微笑まれた。

「おはようございます」

何の抵抗も無しに声をかけられて、呆気に取られながらも挨拶を返した。

「この時間ならこんなに座れるんですね」
「あー、そうですね。もう少し後になるともう混みますからね」
「僕も今まで一本遅かったんですが次からはこれに乗ろうかな」

あはは、とまだ幼さが残る笑顔を向けられ、何かが胸にすとんと落ちてきた。

「どこで降りるんですか?」
「えっと……ー駅ですね」
「あ、一緒」
「どちらの会社なんですか?」

互いの会社を教え合えば、近いことに気がついた。

「あそこの会社って雰囲気が良いなって感じますよ」
「そうですか?まあ楽しくやっていますけど」
「僕のところも楽しいですよ。第一志望の部署に行けたからかもしれないけれど」

ふわふわ。
この表現がこの人にはぴったりだと思った。

当たり障りない話を進めていくと、降りる駅のアナウンスが車内に響いた。

「次ですね」
「はい」

ゆっくりになるスピードに合わせて立つ準備をする。
停車し、隣にいる「栄口」さんを見やると、同じように立ち上がった。

「今日、この車両に来て良かったです」
「、え」
「巣山さんに、会えたし」

幼い顔立ちは変わらないのに、栄口さんは少し大人っぽく笑った。

「っ」

電車を降りて歩き始める。

「栄口、さん」
「はい?」
「近くにうまい店があるんですよ」
「はあ」
「今度一緒昼に行きませんか」
「!」

栄口さんは嬉しそうに微笑んだ。

「是非!」
「じゃあ」
「あ、アドレスを!!」
「ははっ、はい」

アドレスを交換して各々会社へ入る。

その後メールを送った。

『明日も同じ車両で』

初めて会った時に胸にすとんと落ちた何かが「恋」だと分かったのは…それから1ヶ月経った後のことだった。



END



***
リィ様から七万打リクエストの「社会人巣栄パロ」でした。
スーツ姿を考えただけで幸せでした(笑)


リィ様、リクエストありがとうございました。
遅くなり申し訳ありません。
初対面設定ということでしたがこんな感じで良かったでしょうか。
ほのぼの一組がお好きということで目指してみましたが…
こっちもゴロゴロしてしまう素敵なリクエスト嬉しかったです。
これからもよろしくお願いいたします。
ありがとうございました!!書き直し希望などお気軽にお申し付けくださいませ。


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