「栄口、Bメロんとこってさ」

キーボードを優しく布で拭く栄口に声をかける。その男はぱっと顔を上げて俺が持っているスコアを見た。

「うん、ここだけ半音上がるよ」
「そっかー、今まで上げてなかったからさ」
「君島ってば、危ないよ」

困ったように笑いながらスコアをピンと指で弾かれた。聞いて良かった。

「君島のベースは注目されてるんだからね」

ニコ、と笑いながら話すもんだから俺は素直に受け止めた。

「おう」

そう返事を返したら、ガチャリとスタジオへ誰かが入る音がした。

「巣山!!…と青木!」
「おいおい俺に対しての反応遅くなかったか?」
「気のせい気のせい。あのさ巣山、この曲のラストなんだけど」

栄口は嬉しそうに巣山の元へ駆け寄った。巣山も口元をゆるりとして受け入れる。

「ああ、前話してたやつか。うん、こっちのが良いと思う。じゃあ練習すっか」
「うん!!」

例の曲のラストはキーボードとドラムで締めることにした。栄口と巣山のコンビネーションはすごいんだ。
さすが二遊間。この二人には入れない何かがある。

「お、調子良いじゃん」
「おう」
「巣山のドラム本当に見ごたえあるよね。だから難しいスコア書きたくなるんだけど」
「最近ハードなのはそのせいか」
「あはは、ごめんっ」

「まったく…」だなんて言いながら、巣山は幸せそうに栄口の頭を軽く小突いた。

「そういえば巣山が書いた詞、青木覚えたか?」
「ああ、ラストの?ばっちりだぜ」
「珍しくラブソングだったもんな。巣山の詞でラブソングって珍しいよな」
「…歌詞に書く方が、積極的になれんだよ」
「「え」」

巣山の言葉に、栄口は恥ずかしそうに俯いた。え、何それどうしたの。

「…この詞…巣山からさか」
「し!それ以上言うな君島!!俺が歌うんだからもうやめてくれ」
「…悪い」

相変わらず二人は照れ臭そうに笑い合っていた。馬鹿野郎。

「じゃあ行くか」
「あ、巣山」
「ん?」
「頑張ろうね!」

栄口は巣山の頬にキスをした。巣山も同じように返す。

「これやると緊張しないんだよな」
「うん!」

二人は仲良く控え室を出ていった。

「…あの二人がやるから憎めないんだけど」
「このテンションで曲やるこっちの身にもなってくれ…」

その後少し緊張していた青木にチューしようとしたら全力で拒否された。むしろ殴られた。


***


「もう巣山くん巣山くんって女の子騒ぎすぎだよ」
「何、妬いてんの?」
「そ、そんなわけないじゃん!!」
「あー、そっか。じゃあさっき女の子に無理矢理渡されたアドレスにメールでもしようかな」
「!?ごめんなさい嘘です焼き餅妬きました」
「…栄口ってほんと、可愛いよな」
「っ、巣山!」



END



***
ユカ様からの七万打フリリク「巣栄でバンドパロ」でした。
書き直し希望などお気軽にお申し付けください。

一組ネタがお好きということで一組とのバンドパロ書かせて頂きました。
あの二人は周りを幸せの渦に巻き込みますよね!
大好きだなんて嬉しいお言葉ありがとうございます!!私もユカ様大好きです←
これからもよろしくお願いいたします。
リクエストありがとうございました!!



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