「栄治」

神は優しく沢北の名を呼んだ。沢北は整った唇を開きその呼び掛けに答える。「そう」と名前を呼び返した声には甘さを含んでいた。

会うのは久し振りだ。アメリカと日本の遠距離という関係。好きで好きでたまらないのに、会えないのはもどかしかった。電話やメールでも繋がることはできるが、時差や遠すぎる距離に縛られる。神は隣に座る沢北の手をぎゅっと握った。

「もう、帰らないといけないのかあ」

日本のチームとアメリカで沢北が所属するチームが、親善試合を行った。それで沢北は日本を訪れていたのだが、試合の後の数十分ほどしか神に会うことができなかった。

「うん」
「試合お疲れ様。栄治のチームすごかったね」
「レベルたけーよあいつら。一緒にいて学ぶことばっかだ」
「だろうね」

沢北の泊まるホテルのベッドに二人で腰かけて話をする。隣にいるのに遠い。この距離は離れていた時間を現しているのか。

部屋の電話が鳴る。沢北は一年前とは比べ物にならない流暢な英語で相手と話す。神は、もうそんな時間か、と小さく溜め息を吐いた。一緒にいられる限られた時間。

「そ、う」

電話を切り戸惑った表情で見つめてくる恋人をようやく抱き締め、耳元で囁く。

「あと10秒だけ」

キスをして、強く抱き締めて、そして最後に「大好きだよ」と告げた。沢北は真っ赤な顔をして「俺も、大好き」と伝える。足りないだなんて贅沢だ。もっと傍にいたい。

もうすぐ受験だ。渡米するために頑張らなければならない。
泣きそうな沢北の瞼にキスを落とし、「行こうか」と手を引いた。


***
遅くなりましたが神沢の日2013!ありがとう神沢!大好き神沢!





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