ガタンゴトン。電車に揺られて俺は空港へ向かっていた。見慣れない景色は、気持ちのせいか印象の悪いものへ変わってしまいそうだ。窓を見つめ、苦笑する。あいつは今、笑っているんだろうか。
「栄治」
キャリーバック片手に佇む栄治の後ろ姿に、いつものような自信は感じられなかった。抱き締めたい。傍で守ってやりたい。
「、宗」
俺の名前を呼びながらも振り向かない栄治。震える肩。こんなに、泣き虫なのに、それでもこの選手は海を渡る。知らない土地で、知らない言葉が飛び交うコートを駆けるのだ。
不安と寂しさと、それから「頑張れ」の気持ちが交錯して、気づいた時にはすでに腕が伸びていた。人がいる空港で抱き締めるなんて俺らしくないと思う。だけどそんなの関係ないくらい、もう意味をなさないくらい、今俺は余裕がなかった。
「そ、う」
鼻がかった声に胸が震える。もっと呼んで。傍にいて。これ以上、今まで以上遠くへ行かないで。
「…そ」
「栄治」
背中越しに抱き締めているから顔は見えない。きっと泣いているんだろう。僅かに見える顔が赤くなっていた。
このまま、顔を見ないまま送ってしまえば、楽かもしれない。でも、栄治に対して…最愛の、愛した人にそんな卑怯な真似はしたくなかった。
体を離し、肩を掴んで正面を向かせる。涙でいっぱいの目で俺を見つめる栄治がいた。
好きだ。好きだ。想いが溢れてしまいそうになって、俺は深く呼吸した。
「栄治」
「…っ」
「ねえ栄治」
「、」
「泣いて帰ってきたりしたら…承知しないからね?」
「え」
「行くんなら、ちゃんと、やってくるんだよ。俺は待ってるから」
「そ、う」
「…頑張れ」
栄治は必死に涙を堪えて頷いた。
搭乗のアナウンスが鳴る。離れる栄治。その時言われた「これからもずっと、好きだ」って言葉につい引き留めてしまいそうになったけど。
「…俺もだよ」
待ってる。待ってるから…夢を追いかけていくことを諦めないで。俺はずっと、傍にいるから。
だから笑顔で送り出そう。栄治が不安にならないように。一人だって感じることがないように。
***
なんだかもう神沢カラオケしてきてもう勝手に神沢フィーバーしましたはい。
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