誕生日プレゼント01 「……かいちょう、」 少しだけ落ち込んだ様子の男が、俺の服の裾を引っ張った。 正直、鬱陶しい。 二人きりの、生徒会室。 他の役員たちは丁度出払っていて、暫くは帰ってこないだろう。 目の前にいる男の名前は、知らない。顔は整っているし、図体もデカいから、人気はあるだろうな。 それに今風紀の書類を渡されたから、きっと風紀委員の――ああもう、考えるのが面倒だ、どうだっていいか、そんなこと。 「……会長、俺、」 「何だ」 「………俺、その、この間、会長が、」 男が言った。 俺が、誰かに、抱かれたところを、見てしまった、と。 申し訳なさそうに、俺の裾を掴む手に力が入った。 眉を垂れさせて、精悍そうな顔が台無しだ。 俺は、薄らと微笑んで、俺を留める指を、外した。 「――それで?」 「…え?」 「だから、何だって言うんだ?」 後ろを向いて、少し、ほんの少し、俯いた。 「……穢れてるって?」 「ちが、」 息を、ゆっくり、吐いて。 「そう思いたければ、思えばいい」 「会長、」 震えそうな声を、隠すように。 「俺が、どんな思いでああなったか、知らない癖に」 突き放すようにそう言う。 拳を握りしめて。 「ッ会長!」 すると、叫ぶような声と共に、腕が俺の身体を捕えた。 ぎゅうぎゅうと、潰しかねない勢いで俺を抱きしめる。 「会長、…っ会長、俺、そんなつもりなくて、」 「……」 「ただ、俺は、…おれは、」 「………」 「会長が、もし誰かと付き合ってたら、って、思って、」 つらつらと言い訳のようなものを男は俺の耳元で並べた。 ――ぞくりと、する。 案外、腰に響く声だった。 それに俺を絡める腕だって筋肉もついているし、…この図体なら、アレもデカいだろうし。 簡単だった。 さもそのように、可哀想な生徒会長を演じれば、俺を盲目的に慕ってくるやつは、騙されてくれる。 付き合う、なんてそんな勿体の無いことはしない。 気に入った身体とは何度だって、セックスしたいものだから。 「なあ」 閉じ込められたままの身体を反転させて、泣きそうな男の首に腕を回した。 「……会長?」 「だったら、慰めろよ」 知ってたんだよ。 顔を合わせた時から。 お前が、俺を、そういう目で見てること。 そして、お前が、俺の『お願い』を、断れないことも。 >> index (C)siwasu 2012.03.21 |