「うあっ、あッ、あンン…ッ」 ここまでやり倒せばもう吹っ切れたのか、一星は勃ったままの自分のモノに手を伸ばして扱き出す。気持ちいいのか舌を出して蕩ける表情を見せるこいつに欲情しないわけがなく、俺は動きを早めながら下腹部に熱が溜まっていくのを感じた。 そしてもう少しでイけそうだと思った時、突然鳴った音にびくりと肩を揺らす。 「っ」 一星の身体も同じように跳ねて固まる。音のする方に視線を向けるとそれは一星の携帯で、慌てて一星は手を伸ばすが、それよりも先に携帯を引ったくった。 「おいっ」 一星が睨みつけてくるが知ったことではない。画面を見るとそこには「柊 十瑠」という名前が表示されていて、俺は目の奥が熱くなった。その間に着信音は止んだが、また暫くしてトオルからの着信音が鳴り響く。 一星のことを心配してるのか、だったら何故切られてすぐではなくこのタイミングでかけてくるのか。俺は胸の中で嫉妬を滲ませながら画面を一星の方に向けた。 「おい、トオルから電話来てんぞ」 「っ、貸せや!」 手を伸ばしてくるが俺はそれを躱しながら抽送を再開する。乱暴に突けば口を押さえてびくびくと震える一星を見下ろしながら、また一度止まって再度鳴り出した携帯の通話ボタンを押した。 「っ、お前…!」 目を真っ赤にさせて顔を歪ませる一星なんか知ったことではない。俺は携帯を耳に当てながら相手の確認もせずに口を開く。 「よお、あんた一星のカレシさんだろ?悪いけど今取り込み中なんだわ、とりあえず終わるの待ってくれね?」 我ながらなんてちんけな悪役みたいな台詞を並べるんだと突っ込みながらも、相手の言葉を待つ。怒るか、悲しむか、戸惑うか。まあ自分のオンナ寝取られて平気な奴はいねえよな、と自嘲していると、沈黙が続いてた電話口から息を吸う音が聞こえた。 「あんたもしかしてカイチョーさん!?いやっ、嘘やん、ちょっと待って、ちょっと待って!え、合意?いや、合意やんな?いやもう合意でええんちゃう???あーあーちょっと待ってな一回深呼吸するなすーはー……あかん、めっちゃ萌える。いやあんな、うち寝取られプレイとかめっちゃ好きなんやけどまさか自分がされると思わんかったわー。え、でもこの場合浮気?あー、でも全然ありやわ、カイチョーさんなら許せる。むしろ嫁にあげる。え、でもちょっと待って取り込み中って言った?取り込み?何が!?どこまで!?一星のケツにカイチョーさんのはインしてんの!?ちょ、そこはっきりしとかな切るに切られへんわ。教えて、インしてんの?してないの?いやしてるやんな???ほんで初めて味わう男の味にぐずぐずになって蕩けてる一星が……あー、ほんまあかん、尊い。エロってすごい。さっきまで電話しながら読んでたBL本が失恋エンドやったからめっちゃ引きずってたけどなんかもー一気にテンション上がったわ。上がりすぎて語彙力失う。つらいむり最高……あ、ごめん今ヤってる最中やってんな?いや電話するタイミングうち神すぎやろ、テンプレ展開味わえるとかマジでヤバない?一星には終わったら連絡ちょーだいゆーといて!あ、でも全然それ終わってから一回風呂入って風呂でもムラっとしてヤってもーて出てからもう一回ヤって最後に一星が赤ちゃん出来ちゃうとかぬかすぐらいヤリ倒してからで構わんからな!痛いのはやめたって欲しいけど痛いほど気持ちええのは全然ありやから!あと個人的にはその後足腰立たへん一星にめちゃくちゃ優しくしてキュンってさしたって!強引に抱いた後優しく受けの頭撫でて笑みを浮かべる攻めってシチュエーションうちめっっっっっちゃ好きやねん!頼むでカイチョーさん!俺様のスパダリ力発揮するところやからな!じゃあ電話待ってんな!!!」 ブツリ。 一方的にまくしたてられて切られた電話に、俺はぽかんと口を開けたまま固まる。あのマシンガンのような声は一星にも聞こえたんだろう。唇を震わせて真っ赤な顔を見せる。 電話口の声は、どう聞いても女の声だった。勢いが凄すぎて内容は全然頭に入って来なかったが、聞き間違えがないぐらい高い女の声だった。 完全に体も脳もフリーズしてる中、怒りが高まりすぎて逆に涙目で見上げる一星と目が合う。そこで俺はようやく思考が働いて、思い出したように手を叩いた。そうだ、電話口の相手に何か既視感を覚えると思えば。 「お前の彼女、あの親衛隊長に似てるよな」 返事が無言の拳だったのは、言うまでもないだろう。 [ ←back|title|next→ ] >> index (C)siwasu 2012.03.21 |