Ex.



※リクエスト



 俺、里田幸生は現在悩みを抱えている。

「南先輩、これ、さ、差し入れです!」
「ん、ありがと」
「南先輩!僕も…っ」
「あ、ちょっと待って僕の方が先だよ!」

 それは恋人の南隆史のことである。

「ゆきお、機嫌悪い?」
「べぇ〜〜〜〜〜っつに!!」

 朝の登校時間。毎日一緒に通っている俺達だが、なんせ隆史はモテる。生徒会長補佐を始めてから更にモテる。会長の俺よりもモテる。おかげでいつの間にか親衛隊なんぞ出来て、こうして可愛い生徒達から毎日差し入れやら手紙やらをもらう現状。恋人の俺がそれを見てにこにこ笑っていられる筈がない。

「お前俺と付き合うようになる前からそんな感じだったのかよ」
「ちがう。前は怖いって言われてたけど、ゆきおと一緒にいてから皆怖くないって」

 なんだそれは。つまり俺といることによって不良という近寄りがたい肩書きが消えとっつきやすくなったってことか!

「納得がいかねぇ…俺の方がえらいのに。イケメンなのに。会長なのに」
「ゆきおは格好いいよ?」

 そう言ってくれるのはお前だけだ、隆史。両手いっぱいに貰ったものを抱えて可愛く首を傾げる隆史を見ながら俺は涙目を隠そうと勢いよく靴箱を開けた。
 ら、大量の手紙が落ちてきた。

「すごい…いっぱい、ラブレター」
「は、ふ、ふはははは!まぁ俺も会長だからな!偉いからな!格好いいからな!」

 まぁ元々モテる要素はあった訳だし?あれか、俺も隆史同様近寄り辛かったオーラが消え隠れファンがこぞって気持ちを伝えようと…けどこんなに手紙ばっかりって俺のファンは照れ屋なんだな、きっと。

「まぁこんなにもらっても俺の恋人は隆史だけどな!」
「俺もだよ?好きなのはゆきおだけ」

 しかし恋人である隆史を悲しませないようにと照れながら言えば、ふにゃりと笑われて思わず赤面してしまう。これが夜は肉食獣のような目をするんだから男ってのは怖いもんだ。

「お、ほらみろよ。こんな可愛い形の手紙も…何々、いつも里田会長のことを想っています。その顔が精子に塗れて涙を浮かべる表情、苦しそうに勃起したペニ…スを咥えるす、がた…僕の熱い…男根を…その中にねじ、込んで…泣か、せ、た…え、………え?」
「…なにそれ」
「いっ、いやほら!こんなに量あるんだしそりゃ一通くらいは変質者的なもんも入っているだろ!こっちは何かシンプルだしまともそうだぜ?えーと、会長的に南隆史と3P…ってのは…ありで、すか?ありなら、こ、のメアドに…連絡…を…」

 どうしてだろう。冬はまだ先の筈なのにすっごい背中が寒い。寒気がする。背中っていうか後ろにいる南の隆史さんが凄い冷気をまとっている気がする。いやだ、後ろを振り向きたくない。

「ゆきお、」
「っ」
「その手紙、全部俺にちょうだい?」

 錆びついた機械のように振り返れば満面の笑みを浮かべて手を差し伸べる隆史。しかし目は笑っていない。そして俺の目は潤んで前が見えない。
 結局俺に手紙を送った中で身元が判明する生徒は次の日全員階段から転んで欠席した。ちなみに俺の腰も役に立たず一日中生徒会室に引きこもる羽目になった。
 ついでに俺の親衛隊が半泣きになりながら俺にちょっかいをかける、もしくはかけそうな生徒達を牽制していったのは…ご愁傷様としか言えない。



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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