Ex.



※ツイッターの診断よりリクエスト



「え?ストーカー?」
「うん」

 グラスを置く尖った爪を見ながら頷いた。
 行き着けのバーを経営してる女性の格好をした蛇のオカマは姉さんと呼ばなきゃ絞め殺されることで有名だ。

「大丈夫なの?警察は?」
「行った。けど実害出るまで動けないし現行犯じゃないと捕まえられないって」

 せめて盗撮現場を引っ捕らえればいいのに流石触手というか…毎回寸での所で逃げられている。

「本当あの犬役に立たねぇ…」

 泣きながら無理だと首を振る警官にしては頼りない奴の姿を思い浮かべて毒づいた。

「難しいわねぇ…私家の周り見張ってあげようか?」
「いいよ、それは何か悪いし」
「ちなみにどんなストーカーなの?」

 聞かれて俺は姉さんと目を合わせるとその瞳を横に滑らせた。

「はぁはぁはぁはぁ。お酒飲んでるチカちゃんって何かストイックだね美人さんだね頬っぺたが赤くなってる所なんて色気たっぷりで食べちゃいた…ひぎゃん!」

 とりあえず座ってる奴ごと椅子を蹴り倒した。

「…これ?」
「これ」

 姉さんが呆気に取られた顔で床に倒れた男を指差している。

「まぁ…イケメンなのに何かしらこの漂う残念臭。顔はタイプなのに」
「マジでこれ引き取ってよ姉さん」
「私バリタチだけど大丈夫?」
「むしろ二度と俺の目の前に現れることのないように掘り倒して」
「えっ!?やだよ?やだからね?俺童貞も処女も捧げるのはチカちゃんにだけって決めてるんだから…!」
「キモい!本当キモい上に何お前童貞なの!?」
「だってセックスは本当に好きな人としなさいってママが…」
「童貞の上にマザコンかよ更にキモい…!!」

 つい椅子を引いて距離を取る俺は悪くない。

「でも何かチカも満更じゃなさそうよねぇ…」
「マジ冗談やめて、流石に姉さんでも俺怒るよ」
「はい!この間一緒にお風呂に入ったことあるぐらいには相思相愛です!」
「あれはお前が勝手に湯舟に隠れてたんだろーが!!」

 ダメだこの男と話すと毎回こんな感じだ。
 俺もそろそろ学習しろ。

「で、この子名前何て言うの?」
「え?」

 姉さんの言葉に俺は触手でストーカーの首を絞めながらそっちを向いた。

「だから名前」

 ………。

「お前何て名前だっけ?」
「えぇ!?酷い!この前教えたよね!教えたよね!?」
「すまんリアルに忘れた」
「あぁん!そんな忘れっぽいチカちゃんも好き好き大好き!」
「…とりあえずストーカーって呼べばいいと思う。もしくはキモ男」
「成る程ストーカーちゃんね」
「あれ?俺もしかしてこれからも名前呼ばれないまま?」
「うん」

 お前に名前なんて必要ないだろ、とりあえず俺がデレたりしなきゃ。
 そう言ったらメソメソと泣くストーカーに溜飲が下がる。
 まぁそんなこと絶対有り得ないだろうけどな。



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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