愛情表現注意報



 俺は今ストーカー被害にあっている。

「チカちゃーーーん!!今日も可愛いねはあはあ!犯したくなるぐらい可愛いねはあはあはあ。…ああっ、やっぱたまんない…っ!なんでチカちゃんって5メートルも離れてるのにこんなにいい香りがするんだろうね!お兄さん興奮しちゃうよっっっ。とりあえずまずは挨拶代わりにセックスさせて欲しいな!俺の触手をチカちゃんの中で受け止めて欲しいなはあはあ」
「ひぃぃぃぃ…っ!五月蝿い黙れ消えろ呼吸するな、そしてそのまま死ね!!」
「その罵倒にすらチカちゃんの愛を感じるよ…って痛い痛い痛い!チカちゃん痛いよ!殴らないで蹴らないで!!ちょっとお兄さんの固い触手が勃ってきちゃったじゃん!あっ、やっぱり気持ちいいからもっと踏んで!」
「もうヤダこいつ気持ち悪い…!!!」

 …しかも相当変態なオープンなストーカーだったりする。





【愛情表現注意報】





 今日もどこからかあの黒い虫のように這い出てまわるストーカーは、悲しきかな。いつもと変わらず通常運転のようだ。

「チカちゃあああああん!チカちゃんチカちゃんチカちゃあああああん!!!あぁんもう今日も可愛い昨日のチカちゃんも可愛いけど今日はもっと可愛い…!え、ってことは明日はもっともっと可愛いチカちゃん?明後日は最高に可愛いチカちゃん?明々後日は究極に可愛いチカちゃ…っ想像したら股間が熱くなってきた…!でもチカちゃんはいつだって可愛いよ!!」
「ああもう本当キモイ!本当にキモイ!!」

 近付いてきたストーカーは体から触手を伸ばすと俺に絡み付いてくるので、問答無用で引き千切る。そしてヒギィという悲鳴の後に倒れるストーカーを復活する前にと足でひたすら踏み続けた。

「お願いだから動くな!そのまま死んでくれ!!」
「ひぐぅっ、ひっ、ひぃっ、俺をっ、必死に踏むチカちゃんの、愛が重い…!しかしそれがいい!!」
「あぁもうやだ!このままこいつに硫酸ぶっかけたい!!」
「チカちゃんに殺されるなら本望!」

 伸ばした触手で器用に手を作ると親指を立てるストーカーのそれをまた遠慮なく千切って俺はとりあえずスーパーの袋から買ってきたばかりの塩をかけてみた。あ、効いた。

「ひぎゃっ、チカちゃん!塩はダメ…っ塩はらめええええ!!!」
「え、これ以上かけたら溶けるのか?なぁ、溶けてくれるのか?滅してくれるのか?」
「まぁ暫くしたらまた復活するけどね!」
「うわ、うぜぇ…」

 この触手という名のストーカーが俺に付きまとい始めたのはつい半年前のことである。
 お隣さんとして越してきたこいつは、こともあろうか俺を見るなり体から触手を伸ばして「俺と子作りしませんかっ!?俺と一緒に愛を育みませんか!?出来たら僕の触手を貴方の中で受け入れてくれませんか!?というか種を植え付けさせてくれませんか…!!」と言いながら迫って来たので問答無用で頂いた粗品を投げつけて部屋に逃げた。何あれ怖い。
 どうやら俺に一目惚れしたというストーカーは、以来その本来の触手である体を駆使して覗きをしたり絡み付いてきたり覗きをしたり覗きをしたり…最近真剣にホームセキュリティに入ろうかと考えている。それぐらいに怖い。

「本当チカちゃんって可愛いよね、もちもち頬っぺがキュートだよ☆」
「…うるさい」

 俺は眉を寄せて尻尾のように生えているストーカーよりは幾分か柔らかく太い触手でストーカーの首を絞めた。
 スライムの俺は、悲しいことに肌が人よりプルプルしている。見た目は人と変わらないが、近付いてよく見れば肌が少し透き通ってて光沢ものっていた。女の子は羨ましいと言うが、冗談じゃない。男の俺にとってはコンプレックス以外の何物でもなかった。
 そこをついてきたストーカーに苛立つ気持ちのまま、締めている触手に力を入れる。

「あっ、首はダメ!首は絞めたら死んじゃう多分!」
「多分じゃなくて本当に頼むから息を止めてこの世から消えてくれ」
「その時は幽霊になってチカちゃんを見守っているね!」
「ストーカーは変わらないのか…!」

 最早絶望に近い気持ちになりながら俺は項垂れた。最近本気で引越しを検討中だ。ちなみにお巡りさんには通報したが案の定実害が起きるまでは動いてくれる様子はない。くそ、役に立たない警察め。何かあってからじゃ遅いんだぞ。

「あー…でも」
「なんだ蛆虫」
「はぅっ、蛆虫…!」
「いいから話せよ」
「あぁ、そうそう」

 首を締めてたままなのに最初のあれは演技だったのか、にゅるりと首を伸ばして(なんか妖怪みたいで怖い)俺の眼前に自分の顔を近付けたストーカーはにっこりと笑った。

「俺はチカちゃんが力あって強くて格好いい所も知ってるよ?」

 そう言って寄せてきたストーカーの唇が自分に触れる前にグーで殴った。

「ふげっ……うぅ…チカちゃん、ちゅーぐらいさせてくれてもいいのに…」
「うるさい」
「そんなちょっと赤い顔をしてるチカちゃんも可愛いよ?」
「本当うるさい!」

 もう一回思いっきりストーカーを殴った。

「先ずはお前の名前教えろよ」

 言ったらえ?と返ってきた。

「知らなかったの?」
「うん」

 むしろお前教えてなかったことに気付いてなかったのか。
 そこにビックリだ。



end.



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(C)siwasu 2012.03.21


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