06


「今日も二人揃って可愛いねぇ、お兄ちゃんと一緒に今度温泉旅行でも行かない?」
「お前、よくそんな露骨過ぎるアピールが出来るな」
「あ、志藤も一緒に来ていいよ?」
「お兄ちゃんと、旅行?」
「わーい、行きたい!」
「いや、俺は絶対行かねえから」

 何故俺の尻を狙うクソガキ二人とそれを狙うペドファイルと温泉なんて行かなければならないのだ、考えただけでも頭が痛い。というか土屋、それは浮気になるんじゃないのか、カリンちゃんに言いつけるぞ。
 俺の言葉に不満げに頬を膨らませる顔が瓜二つのクソガキ二人、志藤悠人と志藤幸人は俺と血の繋がった双子の弟だ。同じ学園の小等部四年生。この間誕生日を迎え、はしゃぐ姿はとても弟らしかった。
 ハーフである母親譲りの深い藍色の目と色素の薄い髪は美少年と呼んでも過言ではなく、それが二人も同じ顔で揃っているのだから土屋からすれば理性を抑えるだけでも精一杯なのだろう。俺は手を出せばすぐに殴れる準備だけしておいた。
 ちなみに見た目だけじゃなく性格もよく似ている二人は好みも一緒で、嫌いなものも同じだ。
 本来ならこんな可愛い弟を持って兄としては誇らしいはずなのだが、悲しいことにこいつらも土屋と同様天に二物を与えてもらえず。二人とも実兄である俺に異常な愛情を寄せている性的嗜好の持ち主だ。

「お兄ちゃん大好き、ぎゅっぎゅっ」と可愛らしく抱きついてきた三歳児コンビはもういない、今では「お兄ちゃんのトロ顔見たいからおしりにこれ入れていい?」とリコーダー片手に迫ってくる。勿論断固拒否したが。

 このクソガキ共がこんなことを言い出したのは確か二、三年前だ。ちょうどその頃防犯用にスマートフォンを与えられて嬉しそうに触っていたことを思い出す。
 おそらくその時にネットで余計な知識を得たのだろう、インターネット滅びろ。
 俺はいつの間にか双子の隣に座り話しかけている土屋の横に並びながら、二人が手に持っているスマートフォンを親の敵かのように睨みつけた。
 そんなことをしていると十五分はあっという間に過ぎ、ようやく目的の駅に到着した。オフィス街から離れ山に囲まれた長閑な空気に、俺は大きく伸びをする。

「ああ、朝から何でこんなに疲れなきゃいけないんだ、もう帰りたい」

 満員電車に揉まれ、弟達に痴漢され、心は既に疲弊しきっていた。そんな俺の肩を労るように土屋が軽く叩く。

「お疲れ様」
「やっぱり寮に入りたかったなぁ」

 この学園には中等部から寮がある。希望者は誰でも入寮可能なので、俺も双子が性知識を身につけて手を出してくるようになった頃寮に逃げ込むことを考えた。
 しかし二人は俺が入寮話を持ち出した瞬間、泣き出し暴れだし、最終的には家出までしたのだ。夜中に双子の美少年が外を出歩いて無事でいられるはずがない。おまけに家も裕福な為、誘拐だって有り得る。
 案の定、変質者に連れ去られそうになっていたところを巡回中の警察官が発見し保護、それを知った母親は泣き喚いて俺の入寮話を猛反対、俺も流石に動揺して在学中は何があっても自宅通学という話に頷いたのだった。


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(C)siwasu 2012.03.21


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