4旅人と竜、鬼と村から脱出する | ナノ
4旅人と竜、鬼と村から脱出する
※残虐表現(ポケモンがポケモンを食らう描写)あり
ポケモンのイメージを崩したくない方は閲覧注意

 蘇ったともっこ達は村人から丁重にもてなされ、キタカミセンターにある社をねぐらにした。
 彼らは欲深く、長い年月かけて集まった数多の生贄で蘇ったにも関わらず食糧として更なる生贄を欲しており、村のポケモン達をいかに襲って食い尽くしてやるかを語っていた。
 深夜、社の近くに忍び込んだベニータとアララルは彼らが煌びやかな仮面を奪った事を武勇伝のように語る様や、大昔口にしたリザードンの味を語っている会話を聞き、その恐ろしさに戦慄する。間違いなくポニの相棒は彼らに襲われたのである。
 そしてともっこ達が寝静まったのを見計らい、社に忍び込むと多少危なっかしい事にはなりつつ、何とか三つのお面を回収してポニの元へと向かう。
 そして4つのお面の力で座敷牢は開き、ポニは長い時を経て自由の身になれたのだった。
『奴らがそんな事を……この村が危ない、夜が明けたら村中に伝えるぞ』


 日も昇りきってない早朝、ベニータとアララルは手始めに公民館の同室のナルにポニの話と蘇ったともっこの話をし、この話を村中に伝えてほしいと話す。
 そして村の一軒一軒を回って危機を伝えようとした時、アララルがキタカミセンターの方角を指差した。
「気付かれた!あいつらがやって来る!」
『仕方ない、この村を出るぞ!』
「出るって言っても入り口は塞がれてて……」
『獣道だ、まだ残っていれば良いんだが』
「そっか!それがあるって言ってたか!」
 ベニータとポニは竜の姿になったアララルに乗り込むと、草木だらけの道をかき分けて村を脱出する。しかしともっこ達の足は早く、すぐに後から追いかけられる。
『ここはワタシに任せよ』
 ポニはアララルの操縦をベニータに任せるとアララルの尻に立ち、三つの仮面を抱えてともっこ達に立ちはだかる。
 ポニは目を閉じる。お面を託したベニータの温もり、残りのお面を取り戻してくれた思い出、かつて共に生きていた相棒のリザードンの顔……。全てが彼女の力となり、緑の仮面からかまどの仮面に付け替えるとポニはテラスタルした。
 そのままツタこんぼうでともっこ達を打ち付けるが、彼らの毒の鎖の反撃に遭い力を失う。それでも今度は井戸の仮面を被り、それでもやられれば礎の仮面を被り……。ポニとともっこ達の応酬は朝日が昇ってもおさまる事はなく、やがてポニの顔から最後の緑の仮面が剥がれ落ちる。
『ここまでだ』
「まだだよ、オレ達で生きてここから脱出するんだ、しっかり掴まって!」
 そう言うアララルも全速力で走っており疲労困憊していたが、最後の力を振り絞ってギアを上げる。ベニータもアララルのハンドルを取りながらトリックフラワーでともっこ達相手に応戦を試みたが、彼女もまた毒の鎖にやられて猛毒状態にされる。
 最早満身創痍の三人。ともっこ達に囲まれてしまい、絶体絶命となったその時ナルと村人達が追いかけて来るのが見えた。
 ベニータ達が村を出た後にナルが一軒一軒を周り村人全員に今回のことを全て知らせ回ったのである。確かに村は因習に塗れた場所だが、村人の中には禁忌とも言えるこの因習を嫌う者もいた。
「これ以上おらほの村を壊されてたまるか!」
「妹はあいづらの生贄にされたんじゃ!今までは仕方ないと思ってたけんど、畜生共と聞いちゃ許せねえべ!」
「ベニータ!伝える、マシタ!後は私たちに任せて、ハリー!」


 その後のことは覚えていない。三人で息絶え絶えになりながら獣道を走り、とにかく走り、気が付いた時に三人は道中の民家の住民バサギリに助けられ、ベッドの中にいたのだった。
 傷が癒えるまで三人は民家で過ごしたが何物かが追って来る気配はなく、数日経って完治した頃にキタカミの里の情報が新聞やラジオで入ってきた。
 あの後キタカミの里の住民達の手でともっこ達は打ち倒され、再び祠の下へと埋葬されたのだった。そしてこれまで行ってきた人身御供の風習を悔い改め、鬼を奉る村として再出発を図る事になったのである……。
「今戻ったら神様扱いされるけど、それでも故郷に?」
『勿論。残りの人生は故郷で静かに暮らしたい』
「そう言えば故郷がどこか聞いてなかったけど、どこにあるの?」
『パルデア。そこにある森に相棒と住んでいた』


 再び公共交通機関で西へと向かい、パルデアへと戻ってきた三人。ベニータとアララルはポニを故郷の森に送り届けると、それぞれ抱擁を交わし別れを告げる。
『キミ達の恩は決して忘れない。どうか元気で。そしてベニータ……相棒を大切にな』
 そう言い残してポニは仮面を携えて消えていく。遠ざかる背中を見送りながら、ベニータとアララルは無言で拳を合わせた。
 私達の旅がいつまで続くかは分からない。命尽きるまでかもしれないし、コンビを解消する日が来るかもしれない。それでも私達の絆は永遠だ。
 夕陽が沈む森を背にするとベニータはいつも通り竜の姿のアララルに跨り、走り始めた。まだまだ旅は続く。いつかこの毎日が終わるかもしれないけど、少なくとも今ではないから。

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ここまで読んでくださりありがとうございました。
最初は因習村でホラー!をやろうとしたんですが、ホラーものをあまり見ない人間なのと本編シナリオが完成されてたのもあって最終的に中途半端なホラーものに落ち着きました。
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