3鬼の秘密と本当の伝承 | ナノ
3鬼の秘密と本当の伝承
※残虐表現(ポケモンがポケモンを食らう描写)あり
ポケモンのイメージを崩したくない方は閲覧注意

少女の声に驚くベニータ。何者かと訪ねるとテレパシーは『ポニ』と自身の名を名乗った。
『ワタシは山に封印された鬼である。今はともっこに生贄にされた幽霊から木の実と水を運んでもらい命を繋いでいるが、このままここで命を終えたくない。三つの仮面を取り返し、ワタシを解放してほしい』
 到底鬼とは思えない境遇で過ごしている声の主に聞きたいことはたくさんあった。それに三つの仮面は公民館の歴史書に載っていた鬼の仮面のことでは?井戸の仮面、竈の仮面、礎の仮面と書いてあったが、これは本当なのだろうか。
「いきなりそんな事を言われても何がなんだか」
『良かろう、それではこの村にまつわる真の伝承を教えよう』


 ポニがテレパシーで語った話によるとこうである。
 パルデアで生まれ育ったポニにはかつて男のリザードンの相棒がおり、二人は気ままに旅をしながら暮らしていた。そしてある時、この里に足を踏み入れたのだった。
 異国由来の姿をした二人はキタカミの村では恐れられ、迫害を受けて仕方なく山に篭って暮らすしかなかった。
 とは言え、村には入れずとも二人は互いがいれば幸せで、山で穏やかに過ごせたのである。
 それに村で唯一の味方だったお面職人に作ってもらったお面を被れば、正体を隠して村へと降りる事ができる。ポニとリザードンは毎年仮面を被ってこっそり村の祭りを楽しむようになった。
 二人がつけたお面は非常に美しく煌めいており、その豪華さは村中でもちきりの噂になる程だったが、正体を知る者はポニとリザードンとお面職人のみだった。
 当然それ以外は誰も知らなかったのだが、ある日その珍しいお面をどうしても手中に収めたい者達が現れた。それが「ともっこ」と呼ばれるこの里を作り上げた英雄たちである。
 ともっこ達はお面職人を尋問してポニとリザードンの事を吐かせると、ポニの留守中にリザードンがいる山の住居に忍び込み、そのお面を奪い取ろうとした。リザードンは緑のお面だけは守り切ったが、そこで力尽き残り三つは全てともっこ達に奪われてしまったのだった。
 やがて山に帰ってきたポニが見たのはリザードンの片腕と緑のお面だった。お面に、大切な相棒を奪われたポニの衝撃と怒りは凄まじく、ポニは仮面を被ると狂乱したままともっこ達の元へ乗り込み、全員棍棒で殴り殺したのである。
 だが事情を知らない村人は突然村の英雄が殺された事や、怒り狂うポニの姿を恐れ、彼女を捉えて山の洞穴に閉じ込めると、そこに座敷牢を拵えて彼女を封じ込める事にしたのだった。
 それから幾千の時が経ち、劣悪な環境に加えて仮面と相棒を失ったショックでポニは緑の仮面を被らなければ目も見えず耳も聞こえなくなり、言葉を発する事もできなくなった。それでも楽しかった思い出には浸りたくて祭りの時期になると身代わりの思念体を飛ばし、こっそり村に入ったり祭りを眺めるようになったのである。それがともっこ達の鬼退治の影響で醜い祭典に成り果てたとしても。


『元々オモテ祭りは豊穣を祝う祭りだった。それがいつの間にか畜生どもを崇める祭りに変貌したのだ』
「酷い話。それで、ずっとこの村にいるつもり?」
『いや、故郷に帰りたい。ふるさとで相棒を弔い、静かに暮らしたい……だから、ここを出なければならない』
「でも唯一の道が土砂崩れで封じられた以上はどうしようも」
『今も残っているなら、もう一つ抜け道がある。そこを教える代わりにワタシの頼みを聞いてはくれないか?』
「……良いけど、でも何で私を選んだの?」
『ワタシと似ていたから、だな』
 ベニータの脳裏に鬼の使いと罵倒された記憶が蘇ったが、考えてみれば赤いドラゴンの相棒がいるのも彼女と被っている。だからって何もない自分に頼み込む理由になろうか?
 迷いはあった。だがポニの話が心にきてしまった以上、巻き込まれるしかなかった。覚悟を決めてベニータは伝える。
「それじゃ約束。お面を取り返す代わりに、村から出られる道を教えて」


 翌日。アララルに昨晩のお面の事を話すとアララルは目を見開きながらもベニータの事を信じ、自分もポニのために尽くす事を決める。
 朝食を食べ、外に出ると二人は村が騒がしい事に気づく。曰く、昨晩人身御供をともっこプラザの祠に捧げたところ祠の下からともっこ達が蘇り、英雄達の復活に村人一同狂喜したのだった。
 嫌な予感を覚えながら二人がキタカミセンターへと向かうと、案の定村人は蘇ったともっこ達を丁重にもてなし、仮面を返却した上で昨晩の生贄を食わせ、スパイスを与えたと語った。
「あー彼らなら鬼が山入ってったべ。鬼さやっつけに行ったんかもしれねえな」
 急ぐアララルとベニータ。やっとの思いで彼らを見つけると、座敷牢の前でヤバソチャの幽霊が彼らと争っていたのである。急いで加勢する二人。ともっこの一人マシマシラを破ったところでともっこ達は去って行ったが、ヤバソチャの幽霊は消滅寸前だった。
「私はともっこの生贄にされ、以来幽霊となってポニ様に付き従っておりました。どうか、ポニ様の今後が良いものでありますよう」
 ヤバソチャの魂が還るのを見送ると、ベニータとアララルは座敷牢越しにポニと出会う。ポニはヤバソチャの消滅に嘆き悲しみつつ、座敷牢の扉は4つの仮面の力がなければ開かないと語り、それ故仮面を取り返さなければならないと二人に伝えた。
(ポニは喋れないため、緑の仮面を通じてベニータにテレパシーで語りかけた)
『面倒な事に巻き込んでしまいすまない』
「ここまで来ればもうやるしかないし、最後まで付き合うよ」
「俺も!あの畜生どもを倒して仮面を取り返すぞー!」
「いや、倒す必要はないんじゃ」
『何、また墓に叩き込んでやっても良い、ワタシが許す』
 こうしてベニータとアララルは三つの仮面を取り返すべく行動を開始する……。

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【補足】
Q.ともっこ達が村を作ったなら、その頃から人身御供の因習があってもおかしくないのでは
A.当時はポケモン同士の捕食関係が禁忌でない時代だった。祭りがともっこを崇める内容になった辺りで捕食が禁忌と認識されるようになるという時代背景があります

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