昼下がりの休憩室で、ハッカーのダランは自前のノートパソコンを使ってゲームをしていた。

今日はマモノ討伐やドラゴンの情報はないので13班のメンバーは部屋でまったりしている。
そんな時に、何かが起きた。

ダランから呟きに近い言葉が発せられたのだ。



「…いやぁ、まさか君がそれをやるとはね」



あのダランが珍しく引いている。
部屋に置かれているモニターと向かい合っている者に対し、向けて言ったらしい。

視線はノートパソコンの画面に向けたままだ。



「え……、何があったんだよダラン」



その言葉に13班のリーダーであるサハラが食いつく。

二人はテーブルで向かい合って座っているため、自然と呟きが聞こえてしまうので仕方がない。



「……これ見る?」



ダランはノートパソコンを少し操作してからサハラに向けて見せる。
これは言うより見ろ、という事だろう。

理解したサハラが覗き込めば驚く事が画面に表示されていた。



「…これ、ムラクモが管理してる個人情報か?」

「先に言うけどキリノには言わないでね。説教は嫌だからさ」



ダランは笑いながら言うが、まず説教をされる様な事をする時点で駄目なのでは…とサハラは思った。
だが、ダランの事だから別に悪用する為にハッキングした訳じゃないだろうと考えてキリノには言わない事にする。



「えーと…、どれ見ればいいんだ?」



ずいっと出されたのはいいが項目が多すぎて何が何だかさっぱりである。
そんなサハラに若干呆れながらも、一番下の左側とダランは教えた。

サハラがスクロールしてその項目を見てみれば、吃驚仰天。
新しく変更したのだろうか。New!マークが付いているのを見たのだが…。



「こ、これハサイダ…だよな?」



確認するように、向かい合わせで見ているダランに言えば。



「……ね、吃驚した?」



と、一言。
表情は見えないが苦笑しているみたいだ。



「……サハラにダラン、先程から何をコソコソと話をしている?」



二人の会話が気になったのか、モニターの操作を中断してくるりと後ろを振り返りながら話に割って入って来た者が一人。
その顔を見ればあまり機嫌が良くなさそうである。



「え…っ、別に何でも無いよなダラン?」

「そうだね、別に君が職業を変えても僕達には何ら関係もないし。
寧ろ笑い者にされるよ。゙アイドル゙なんてね」



サハラが隠そうとして同意を求めたが、見事にダランは言ってしまったみたいだ。


あぁ、いらない所で真面目な部分が出たなこいつ。


サハラは包み隠さず言うダランを見ながら笑うしかなかった。
それにあのハサイダだ。ダランに馬鹿にされては、絶対に怒りの言葉が来ることを予想していたサハラは耳を塞ごうとした時。

返ってきた言葉に驚く事になった。



「何だその事か。試さなければどんな物か分からないだろう?
一年前と同じ様なサイキックでは飽きてきた所だからな…。丁度良い暇潰しだ」



何という事だ、あのハサイダが怒らない。
それよりも新しく変更した職業を随分と楽しみにしている感じにサハラは何も言えなかった。

ダランが完璧に引いているのは言うまでもない。



──────


「アンダンテカンタービレッ!」



後日、物凄く楽しそうにマモノ討伐をしていたハサイダの姿があった。
武器のメガホンを迷うことなく見事に使いこなしている。



「…うわぁ、僕いけないもの見た気がする。いや、同じ班にいるのが信じられないね」

「え、でも…結構使えるスキルいっぱいで良いじゃないか?」



意外にもサハラは新たな職業に対して悪い印象はないみたいである。
慣れは恐ろしい。



「ま、……確かに゙スキル゙なら、使えるけど」



あの見た目でアイドルは流石に合わないよね。


ダランのそんな心の声は誰にも聞かれずに終わる。





(私の歌を聞け!)
**************
アイドルに変更した時の13班の心境はこんな感じかな、と。
あの声と見た目でアイドルを選んだらとんでもない事になったのは良い思い出です。

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