「よーし、周りのドラゴンは粗方片付いたぞ!」
山手線天球儀でSECT11の後を追いかけて13班は着実にドラゴンを清掃していく。
ナビのカレーの指示により、サハラは電磁砲がいる位置を確認する。
「電磁砲の周りには面倒なドラゴンはいない、今なら奴一体のみで済む」
一年前の事もあるのか、この場所に来るとどうしても慎重になってしまうらしい。
見兼ねたハサイダは危険が無い事を伝えてやる。
一々確認しているとSECT11の方の被害が大きくなるばかりだ。
「…そっか、分かったよハサイダ」
サハラは軽く頷くともう一人のメンバーを見る。
先程から銃をくるくる回していたスレイは視線に気付き、なぁにー?と返事をした。
「アイテムは充分にあるか?」
「切らす訳ないでしょ、リーダー」
アイテムを確認する事なく言うスレイ。
本当に大丈夫かは怪しいがここまでは特に使っていないので追及はしない。
それよりも早く電磁砲を倒してSECT11を追いかけなければ。
「よし、行くぞ二人共!」
サハラの掛け声と共に13班は一斉に電磁砲がいる場所へ駆け出した。
電磁砲と戦うには敵よりも素早く行動しなければ、命が幾らあっても足りない。
それは一年前に嫌でも叩き込まれた事である。
これ以上電磁砲による犠牲者を増やしてたまるか!
サハラは刀の柄を強く握りながら電磁砲へ近付いていく。
後少しの距離の所で電磁砲に接触する、という所まで来た時。
事は起きた。
プツン。
「……あれっ?」
「む……」
「…へ?」
辺りが暗闇に包まれたかと思えば、いつの間にか見慣れた光景が13班の目に飛び込んできた。
突然の事に三人とも呆気に取られている。
それもそうだろう。
何せ13班がいる場所は、
゙ムラクモ13班の休憩室゙
なのだから。
「……で、電磁砲…は?」
サハラがまだ状況を飲み込めずにいるが、ハサイダはピンと来たらしい。
「スレイ、アイテムを確認したまえ」
「えぇー?」
何だかいつもと違ってかなり険しい顔で言うものだから、スレイは素直に聞いてアイテム袋の中を探る。
「特に変わっていないけど?」
「そうではない、装備を見ろ」
「装備を……?」
どうやらアイテムの数ではなく、装備の事について言ったらしい。
早速スレイが装備品を確認すると…。
「あ、コートが無くなってる」
スレイが言うコートとは、山手線天球儀の所で入手した装備である。
それが何故か消えていた。
何で?という風にスレイは不思議がっていれば、ハサイダから大きなため息が。
「なになに、一体どういう事なんだ?」
サハラはそんなやり取りを見た後、何か知っているらしいハサイダに聞いた。
少し間を開けてからハサイダは頭に着けているバンダナに片手を付ける。
それからゆっくりと目を閉じて言った。
「ざっと言うと…、勝手に電源が落ちる現象、だ」
セーブをしていなかったな…と、ハサイダが呟いたがそれを理解する者はいなかった。
(突然降りかかるやり直しの悲劇)
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実話の悲劇。
全てがパーになる瞬間は辛い。