「そうだな…とりあえず、お前がやってみろ」



俺達が遅れてエントランスに入った途端、言われた一言に耳を疑った。

…今、何て言ったんだこのムラクモの人は。



「え、俺……?」

「遅れて来たんだ。それに誰かがやらにゃ、他も動きそうにねェからな!」

「えぇー…、そんな……」



そんな理由で練習台にさせられるなんて思わなかった。
いや、これはもういきなり本番だ。

マモノを見る限り強くは無さそうだけれど、他の二人は大丈夫かな。

サハラが不安になりかけたその時、チームである一人の者から言葉が発せられた。



「ほぅ、まずは小手調べといった所の敵か…。ゲームで言う、雑魚のスライムに過ぎん。楽勝だ」



ハサイダである。

マモノとの戦いを゙ゲーム゙に例えている彼を見れば自信しかなかった。
いや、これはゲームじゃないし命の奪い合いなんだぞ。

と、声に出したいけれどそれでハサイダのやる気が削がれたら駄目か。
そう思った俺は黙ったまま刀を構えた。



「戦闘体制を整えるため、ステータスを上げる」



ふと背後から声がしたのでサハラが振り返れば、空中にモニターらしき物が現れそれを操作しているダランがいた。
よく分からなかったが、モニターが消えると同時に体内から沸き上がる力をサハラは感じる。



「…これは?」



気になってダランに聞いてみたら、ハサイダが直ぐに答えた。



「今のはステータスUp…つまり私達の攻撃力や防御力を上げたんだろう。
ゲームで言えばお荷物役のポジションか……」

「……はい?」



いやあの、効果は分かったけれど俺達チームで一応初戦なのに仲間に向かってお荷物って…。

ハサイダの発言に俺はポカンとしてしまう。
お荷物と言われたダランはといえば、ガードの構えを取ったままで何も言わなかった。

どうやら耳に入っていないらしい。



「おい、来るぞ!前を向かんか」

「……いっ?!」



そうだった、相手はマモノ。こんな隙を見せちゃ駄目だ。

俺はハサイダに言われ今までの事を頭から振り払い前を向く。
運よくマモノは襲って来なかったので、そのまま刀を持ちながら飛び出し斬りにかかる。
ハサイダは俺の斬ったタイミングの後を狙って、炎の魔法を繰り出した。



「へぇ……!」



それを見て少しだけ、サイキックのポジションを理解した気がする。
あと、本当に魔法が使えた事に驚いた。


まだ実力は出てないものの、マモノは一体のみだったので難なく討伐出来た。
だけど命の奪い合いを今この瞬間から始まった事にサハラは少し考えてしまう。

この先俺は戦えるのか、と。

確かに平和にしたいが為にムラクモに飛び入り参加したけれど、これは…。

サハラが刀を握り締めた手を見ながら色々と考えている時、前方から声がしてサハラは顔を上げた。



「…おう、初めてにしちゃ上出来だ」

「当たり前だろう」



練習台にサハラのチームを選んだ、ムラクモのガトウだ。
その言葉に対しハサイダは当然の結果と言わんばかりの返事をする。



「………」



止めを刺したのは俺なんだけどな。と、ハサイダに言いたいのを我慢した。



「ま、こンな感じでやりゃあいい。その戦いの様子を見ながら、お前らの審査をさせてもらうってワケだ」

「……今のは審査に入らないのか試験官」

「だが、このフロアはマモノが少ないンでな…本格的な審査は上でやる」

「おい、聞いてるのか?」



ガトウは試験を進める為、ハサイダの言葉を無視して話を他のチームに伝えていた。
それに対しハサイダは密かに舌打ちをしたのを俺は見逃さない。

ムラクモ相手になんて事してるんだコイツ。

俺は後で謝ろうと思いながら持っていた刀を鞘に収めると、周りがざわざわと騒ぎ出す。
どうやら、ムラクモの人が試験を開始するみたいだ。



「…じゃ、とりあえず…全員マモノを始末しながら三階まで来い。根性ねェヤツはそこでバイバイだ」



成る程、三階まで行くのが最初の試験なのか…。

ムラクモの人の話を聞き終わった後、後ろを振り返る。
勿論チームの仲間が俺を見ていた。



「まずは三階まで…、だけど二人は大丈夫か?」



とりあえず確認の為聞いてみれば、ハサイダは呆れた様にため息を吐き俺を見る。



「まだ序盤だぞ…こんなのでへこたれて堪るものか」

「……はは」



相変わらずの上から目線に対し、苦笑いを返す。



「…この組み合わせのチームは計算上問題ない。だから僕は信じるさ、…仲間を」



ダランは俺達のやり取りを見た後にぽつりと呟く。
勿論、場を読んだその言葉は俺とハサイダの耳にちゃんと入ってきた。



「何か頼もしいな、ダランが言うと」

「所詮はお荷物役だがな」

「……おいっ!」



お荷物役とか言うなよ、仲間だろ!

と、サハラはいらないツッコミを心の中でした後に上の階から物音が聞こえ、ハッとして周りを見た。



「……あれっ」



いつの間にかエントランスには誰もいなくなっていた。



「…な…何でだ……?」



まさかまさかのデジャヴに俺は頭を抱えてしまう。
本日2度目だ。



「出遅れはステータス……」

「それには同感するな」



仲間の二人が頷き合いながらサハラを見ている。
どうやら悪いのばリーダー゙らしい。



「あー、はいはい分かったよ!分かりました!……よし、二人共行くぞー!」



何でいらない時に意見が合うんだ、と思いながら俺は階段に向けて走り出す。
今はマモノ退治で試験なんだ。
合格する為にも絶対にマモノには負けられない。
仲間もいるんだ、きっと大丈夫。




(平和に向けていざ戦え)

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原作沿いの序盤にて。
サハラは一度死にそうな思いしたので色々と慎重気味に…。

あと、どうしてハサイダは偉くなってしまうのだろうか。CVの醸し出す性格のせいかも。

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