狂愛の女神

プロローグ


薄水色の髪が汗で滲む。耳の長く長身であり、ローブを羽織った若い風貌の男だった。
細身である双肩を揺らし、荒く呼吸を繰り返した男は不機嫌そうに舌打ちした。精神力も尽き果て、種族からして乏しい体力も途絶える間際だった。

「はぁ…はぁ、…くそ…!」

本当に真っ白な空間だった。今や白さは全て赤に塗り潰されていた。
約30m程の円形状の空間には彼一人しか立つ者はいなかった。
それ以外の者達は皆、地に伏し生気を失っていたからだ。敵も味方も入り混じって、どれが何者なのか分からなくなる程、原型を留めていない者もあった。中にはただの肉塊と化した物体もいた。
壮絶な戦いを唯一生き残った男は、勝利の美酒を味わう事も仲間達の死を悲しむ事も、弔う事すらも出来ずに苦しそうな呼吸に紛れて白い空を見上げた。

「……くそったれ…、そんな愛…いらねぇんだよ……!!」

男の声に、当然返事をする者は誰一人としていなかった。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -