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「おはよ、絢未!」

「あ。おはよう、結」


 翌日、相変わらず交差点のところで結があいさつしてくれる。


「絢未……どうしたの、ニヤニヤしちゃって」

「え? ニヤニヤしてる?」

「うん、してる」

「へへへ……そっか……。わかっちゃう?」

「え? う、うん……」


 結が引き気味で頷いたことが気にかかるが、今はそれよりも聞いてほしい話があるからスルーする。


「実はね……初エッチ、しちゃった」


 こそっと結に耳打ちする。
 結の顔から離れると、言われた本人は私を見て目を丸くした。


「え……ええぇええええ!? うそう、ホントに? でも、好きな人は立花さんって言って……。え、何? 違う人と卒業したの!?」

「ふっふー。実はね、立花さんとしちゃったんだ……」

「えぇええええ!? ホントに!?」

「ホントホント。ついこの前」

「うそ……じゃあ、とうとう告白したの!?」

「あ……それは、まだ……」

「えぇ? してないのに、初エッチしたの?」

「うん、その……なりゆきって言うのかな……いや、勢いかな。いや……流れ?」

「それ、どれも意味同じじゃん……。え、じゃあなんとなく立花さんとエッチして、なんとなく卒業しちゃったってこと?」

「うん……そういうことかな?」


 言いよどむことなくはっきり言いきると、結はあんぐりと口を開けた。


「信じらんない……」

「あはは……。でも、これだけじゃないんだよね……」

「え?」

「なんか……エッチ中に『今さら処女なんて恥ずかしい』みたいなことを言ったら、次の日に『俺が練習台になってあげる』なんて言われちゃって……」

「練習台? って、どういうこと?」

「いや、だから、そのままの意味で……」

「──えーと……つまりは……。立花さんは絢未の好意に気がついてないってことで……いいのかな?」

「そ、そうなるの、かな……」


 曖昧な返答をするしかない私に向かって、結は派手なため息をついた。


「うーん、ダメだこりゃ……」


 ごもっともです……。

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