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立花さんが受け入れてくれて、気がつけばすっかり朝になっていた。
「ん……んん……っ」
「おはよう、新城さん」
「あ……。お、おはようございます……」
ベッドから起きると、立花さんは既に朝食を作り終えていた。
あまりにも普通な態度に、逆にこちらの調子が狂わされる。
「そろそろ起きるんじゃないかと思って。冷めないうちに食べちゃおう」
「は、はい……」
立花さんが焼いてくれたトーストに立花さんの淹れてくれたカフェラテ、スクランブルエッグにウィンナーとありふれたおしゃれなモーニングと言った感じをいただいた。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした。じゃあ少し休憩したら家まで送るよ」
「ありがとうございます……」
いたって普通……。
むしろ普通すぎて拍子抜けしそうになる。
──当然だ、別に立花さんから告白されたわけでも、私からしたわけでもなく、立花さんはあくまで『私の初めて』をもらってくれただけ……。
特別なことは何もない。
かと言って告白する勇気もなく、私は立花さんの車に乗り込んだ。
「すみません、ありがとうございます」
「いいよ」
気まずい……。
もっと何か話題って──ないな。
「新城さん」
「え? あっ、はい!」
「ははっ、急にどうしたの。かしこまりすぎだよ」
「あ、あははは……」
がちがちに緊張しちゃってます……。
「どうしたの、さっきから黙っちゃって」
「あー……いえ……」
「もしかして、昨日の夜のこと気にしてる?」
「えっ!」
「あはは、図星だなぁ? 意識してますって顔に書いてあるよ」
「う……」
「黒川さんも嘘がつけないタイプだけど、新城さんもそうだね」
「そ、そうですか……?」
「少なからず、俺はそう思うよ」
結ほどじゃないと思っていたけれど、やっぱり立花さん相手だとそうも行かないらしい。
「だからさ……ちょっと意地悪したくなっちゃうだよね……」
「え? 意地悪……?」
「あーううん。独り言だから気にしないで」
「そ、そうですか……」
立花さんが意地悪?
そんなわけ、ないよね……。
「新城さんって放っておけないタイプに見えるよ」
「え?」
「そうだ、俺でよければいつでもいいから、いつでも連絡してね」
「え? 何がですか……?」
「だって新城さん、初めては恥ずかしいって言ってたでしょ? 俺でよければ練習台として付き合ってあげる」
「え……ええぇぇぇえええ!?」
なんだか、とんでもない展開になってしまいました……。
どうしてこうなっちゃうのかなぁあああ……。