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 手をひらひらとさせながら忍田さんは会社へ向かったのだった。


「へぇ〜」


 絢未のいかにも「今からからかいます」と言った感じの声色に、ビクッとしながら振り向く。


「な、何!?」

「ん〜? いやぁ、幸せそうな顔してるなあって思って」

「し、幸せそう?」

「うん、いかにも満たされてますって感じぃ〜。いいなぁ」

「そ、そんな顔してた?」


 頬を両手で包む。


「すっごいにやにやしてたよぉ〜」

「もうからかわないでよっ……」

「いやいや、うらやましいなって思ったんだよ〜。私も立花さんから告白されたいなぁ」

「あっそ……」

「そういえば、なんて告白されたの? もしかして、逆に告白したとか!?」

「しっ、知らないっ!」

「ええ〜教えてよ〜」

「絶対に嫌!」

「もうケチ〜。少しは幸せをお裾分けしてよぉ〜」

「もう、しつこいなぁ! 早く研究室に行けば!?」

「あーはいはい〜。教えてくれないから、行きますよーだ」


 恨めしそうにべっと舌を出し、足早に絢未は消えた。

 もう……ホント、恋バナが好きなんだから……。


「早く講義室行こっ」


 まあ、確かに幸せだけど……。
 合鍵とかももらったし、最近はよくお泊まりもして着替えも置いとくぐらいだし。
 でも、逆にそれが怖かったりするよね……今まで恋愛なんてしてこなかったし。


「何もないはずなのに……変だよね」


 そうだ、考えすぎだ。
 考えれば考えるほど不安になる……だから、今は考えないでおこう。

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