「あっ、美歩! こっちこっち」


 日曜日、友達との約束のため、蒼明高校の最寄り駅である湘南駅のひと駅前、海岸公園駅に集まった。
 海岸公園駅は大きなモール施設があり、この周辺の人だかりはかなりのものである。


「お待たせ」

「だいじょぶだいじょぶ。よっし、早速行こっ」


 まずは、先日学校で話題になったカフェに向かい、気になったメニューを友達でシェアしながらだべったりして、お昼を過ごした。

 その後はショッピングモールに出向いて、各々の行きたいところに向かい、ショッピングを楽しんでいた。


(櫻井くんのこともあって、金曜日は寝つけなかったけど、土曜は今日のこともあったし、ちょっと不安ではあったけど、ちゃんと睡眠取って今日を迎えられてよかった)


 おまけに、少しでも櫻井のことを考えずに済むと思うと、いくらか胸が軽くなった気がした。


「あれ? ね、あれ見て」

「え? なになに?」


 続いてアクセサリショップへ行こうとしていたところ、友人のひとりがなにかに気がついて、指を差している。指差す方向はその目的のアクセサリショップ、そしてそこには服装は違うなれど、見慣れた人物が立っていた。


「え……櫻井くん?」

「だ、だよね。なにしてんだろ」


 制服よりはラフだが、やはり清潔感のある白のTシャツに青いシャツを羽織った黒のパンツスタイルだ。


(櫻井くんの私服……かっこいいな……)


 なんとなくそんなことを思っていながら、友人とともに櫻井のもとへ向かった。


「櫻井くん」


 ぼうっとした表情で店内を見ていた櫻井に声をかける。櫻井は美歩に気がついて、はっとしたようにこちらを見た。


「あ、都築か」

「こんなところでなにしてるの?」


 まさか、アクセサリを買いに来たわけではないだろう。ここは女子高生専用のアクセサリショップなのだから。

 櫻井は理由を語りたくないと言った感じにうつむいたが、どうせ見つかったのなら仕方ないとでも思ったのだろう、諦めたように一息つく。


「妹にイヤーカフを頼まれたんだ。ただ、どんなのとは言われなかったから、困ってたところなんだ」


(え、櫻井くんって妹がいるの!?)


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