02目覚める恋
「気を失ってるだけだから、すぐ目を覚ますよ」
「そっか……ありがと、綾ちゃん」
「気にしないで。──あと私、職員室に用事あるから留守にしちゃうんだけど、大丈夫?」
「うん。この子のことは見てるよ」
「そ。なるべく早く戻るから、それまでお願いね」
「うん、行ってら」
綾ちゃんがいなくなると、ベッドに眠る女の子を見つめる。
悪いことしちゃったな……。
目が覚めたら、ちゃんと謝らないとな。
このまま目が覚めなかったら──とかまでは考えないが、危険な目に遭わせてしまったことに罪悪感を抱かざるを得ない。
早く覚めないかな──と心で念じたとき、女の子の口から声が洩れてゆっくりと目を開いた。
「あっ、気がついた?」
「え……?」
少しずつ目を開けていき、やがて驚いたように見開かれる。
何で保健室で寝ているのかと考えているんだろう。
「えっと、あの……?」
「ごめん。俺の蹴ったボールが頭に当たったみたいで、君は気を失ってたんだ。ホントにごめん」
「あ……そうなんですね……」
起きたばかりなのか、それとも未だに驚いているのか、何とも言えない声を発する。
「ホントにごめんね」
「いえ、もう大丈夫ですから」
ニコッと笑う女の子。
気が動転していて、目覚めてことに安心したおかげで、今さらながら可愛い子だなと思う。
不謹慎かもしれないけど。
「そっか、よかったよ。……君、名前は?」
女の子はなぜ名前を訊くんだろうと思って、「え?」と声を上げつつも、小さな声で名乗ってくれた。
「千鶴ちゃんか。俺、瀬戸和宏。みんなからよくカズって呼ばれてるんだ」
「知ってます……サッカー部のキャプテンですよね。友達が先輩のファンですから」
「そっか。千鶴ちゃんは違うの?」
「え? 私ですか……?」
思いもよらない言葉を投げかけれた千鶴ちゃんは、音程の外れた声を上げる。