02強く結ばれた糸

 ………………



「何かお前、変じゃね?」

「は? 何が」


 久しぶりにカズと食べる昼食の最中で、カズがいきなりそんなことを言い出した。
 俺は思わず、いつもの数倍早く瞬きを繰り返す。


「何つーか、さ……厳しいっつーか……」

「んなわけねーだろ」

「いや、少なからず三日月には厳しい! 今日だって、何だって俺と弁当食ってんだよ」

「あー……」


 さすが、痛いトコを突いてくるな……。

 だって、仕方ねーだろ……好きでもねーのにさぁ……。


 正直言ってつらい。
 こんなことなら付き合うんじゃなかった。


「お前さ……まだ綾ちゃんのこと、引きずってんだろ?」

「は?」

「でも忘れたいから、いやいや三日月と付き合ってんだろ?」

「……判ってたのか?」

「大体な……俺ら、付き合い長いからな」


 箸を止めて、片手で顔を覆い隠す。


 あー、そうだよ。

 俺はまだ綾菜先生のことが好きなんだ。

 でも結局、叶わないから、手の届く花に手をかけたんだ。

 でも、その花は……毒を持っていた。

 その毒は俺の心を蝕んでいくんだ。


「お前がそれでいいなら別に構わないけど、そんなことがいつまでも続いたら、それこそしんどいぞ」


 カズの言葉が聞こえたその瞬間、手を剥がせばカズの鋭い眼光が俺を突き刺すんばかりに向けてくる。


 久しぶりに見たその真剣さに、俺の口から乾いた笑いが零れる。


「ははっ……それは、恋愛の先輩のアドバイスか?」


 カズの表情が一気に緩んだ。
 その証拠に、口元に笑みが溢れている。


「まあな」

「……そうか」


 確かにいつまでも逃げているわけにも行かない。
 踏ん切りをつけなければ……。


 再び箸を動かして、カズとの他愛ない話を存分に楽しんだ。

|
しおりをはさむ
トップに戻る
60/96
- ナノ -