始まりの朝
カーテンから日差しが差し込んできて、気持ちよく目が覚めた。
体は昨日の疲れが残っていて少しだけだるい。
けれど、この環境の変化が嬉しくて堪らない。
いつもと違う部屋、いつもと違う匂い、いつもと違う朝の音。
すぐにでも外に飛び出して、朝の様子を眺めたい。
そういう思考を持ちながらも体の方は正直で、グルルとお腹が鳴った。
昨日の引っ越し作業が終わった後、お香さんが帰り際にお握りを置いていってくれたのを思い出して、私は部屋の真ん中に置かれたテーブルに向かった。
椅子に座って、今日すべき事を考えてみる。
留学という名目でありながら、どこかで何かを学ぶような予定はない。
相変わらず、リリス姉はすごい人だと思う。
どうやってただの旅行の延長のようなこの状況を、留学という名目に出来たのか、そもそもどうしてそれが受け入れてもらえたのか、全く分からない。
とりあえず、いくら考えても分からないことは頭の端に追いやることにする。
まずは今日何をするか、それを決めなくてはいけない。
この辺り一体を散策して、地図を頭の中に作りたいけれど、先に白澤さんに挨拶をしに行くべきだろう。
『……よしっ!』
最後の一口を飲み込んで椅子から立ち上がった。
彼に会いに行くなら、と私は昨日片付けたばかりのクローゼットを漁り始めた。
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